National Concealed Carryという言葉が、2025年のアメリカ政治で静かに爆発物になろうとしている。トランプ大統領がTruth Socialに「全米での拳銃携帯に関する連邦法制化を進めている」と投稿し、長年くすぶってきた銃ロビーの悲願が、いよいよ立法の土俵に上がってきた格好だ。

20州超の規制が一夜で吹き飛ぶシナリオ

現在のアメリカでは、銃の隠し携帯(コンシールド・キャリー)は州ごとに取り扱いが全然違う。テキサスやフロリダは許可証なしでも携帯できる「コンスティテューショナル・キャリー」を採用している一方、カリフォルニア・ニューヨーク・マサチューセッツなど20州以上は取得条件を厳しく絞り込んでいる。

連邦法が成立すれば、どんな州に住んでいても「合法的に銃を隠し持てる」状態になる。つまり、厳格な州が長年積み上げてきた独自規制が、ワシントンの一声で吹き飛ぶってこと。連邦優位の原則(Supremacy Clause)が発動すれば州は逆らえない。

「全米での拳銃携帯に関する連邦法制化を進めている。」― ドナルド・J・トランプ(Truth Social)

トランプ銃規制をめぐる動きで注目されるのが、共和党が上下両院で多数を押さえている現状だ。2017年にも下院を通過した「Concealed Carry Reciprocity Act」は上院で止まったが、今回はより強硬な推進姿勢が伝わってくる。法案が連邦銃携帯法として成立するかどうかは、上院のフィリバスター(議事妨害)を超えられるかにかかっている。

日本人が「遠い話」で済ませられない理由

日本から見ると「アメリカの国内問題でしょ」と思いがちだが、引っかかるポイントがある。在米日本人は約42万人。ロサンゼルス、ニューヨーク、シリコンバレーに多く集中しているのは、まさに規制が厳しかった州だ。

治安環境が変われば、日系企業の現地駐在員の安全管理マニュアルも見直しが必要になるし、渡航前のリスクアセスメントも変わってくる。観光客視点でも「周囲の人が武装している確率」が統計的に跳ね上がる地域が増えることになる。National Concealed Carryの話が日本のビジネスパーソンにとっても無関係ではない理由は、そのあたりにあるんじゃないかと思う。

この先どうなる

最大の関門は上院60票のハードルだ。共和党は53議席を持つが、フィリバスターを封じるには民主党から7票を引き剥がす必要がある。連邦銃携帯法に賛成できる民主党議員は農村部の一部に限られ、現実には「和解型の修正案」か「ルール変更(核オプション)」を使うかが焦点になる。

仮に成立しなかったとしても、大統領が声を上げたことで州レベルの規制緩和に弾みがつく展開はあり得る。逆に、銃規制派の州が連邦法の違憲性を訴える訴訟合戦に発展する可能性も高い。2008年のヘラー判決・2022年のブルエン判決と、最高裁は銃の個人保有・携帯権を広げ続けてきた。この流れの中でトランプ銃規制政策がどこまで走れるか、今後数ヶ月の議会の動きを見ておく価値はある。