Slaughter Case最高裁判決が出た直後、トランプはTruth Socialに投稿した。「大勝利」の二文字だけで、法曹界がざわついた。

この訴訟のポイントはシンプルで、かつ物騒だ。大統領は議会の承認なしに、連邦の官僚を自由にクビにできるのか——それが問われていた。今回の判決でその権限が認められたとトランプ側は主張しており、SNS投稿にはこうある。

「スローター事件において最高裁で大勝利。わが国における大統領権限を確認した。」

ただし、ここで立ち止まって確認しておきたいことがある。トランプ自身の投稿が一次ソースであり、最高裁判決の詳細な条文や多数意見の範囲はまだ精査が必要な段階。「確認した」という表現が実際の判決文とどこまで一致するかは、独自の法的検証が要る。

大統領解任権限の歴史——1935年から続く因縁

大統領による行政権と連邦職員の身分保護をめぐる争いは、今に始まった話じゃない。1935年のHumphrey's Executor判決では、大統領は独立機関の委員を「正当な理由」なしに解任できないとされた。それが長年の前提だった。

ところがトランプ政権は一期目から、この「正当な理由」の縛りを緩めにかかっていた。今回のSlaughter Caseが同じ文脈に乗るなら、大統領解任権限の行政権解釈を一気に広げる判例になりかねない。そうなれば、独立機関の委員や行政審判官といったポストも、大統領の意向ひとつで交代させられる世界が現実になってくる。

三権分立への影響——連邦職員10万人単位の話になる

行政権の拡大解釈が定着すると、連邦職員の身分保障は実質的に薄れる。現在、アメリカの連邦文民職員は約200万人。その相当数が、大統領直属の政治任用ではなく「メリットシステム」と呼ばれる能力主義採用で守られてきた。

三権分立の観点では、議会が設置した独立機関のトップを大統領が自由に解任できるとなると、立法の意図そのものを行政が無効化できることになる。法学者の間では「行政国家の終わり」「帝王的大統領制の復活」という言葉がすでに飛び交っており、リベラル系の法律家からは強い反発が予想されている。

この先どうなる

判決の実際の射程——どの職種・どの機関まで解任権限が及ぶのか——は、下級裁での個別訴訟を通じてこれから確定していく。トランプ政権が早速この判決を根拠に人事を動かすかどうかが、最初の試金石になるだろう。野党・民主党は議会での対抗立法を模索するとみられるが、共和党多数の議会でどこまで機能するかは未知数だ。Slaughter Case最高裁判決を起点に、大統領解任権限の実務的な範囲が固まるまで、法廷闘争はまだ続く見通しだ。