ヘメディへの死刑判決が下されたのは2026年7月13日、しかし法廷に被告の姿はなかった。スーダン内戦の片方の当事者である即応支援部隊(RSF)の最高司令官モハメド・ハムダン・ダガロ、通称ヘメディを、ポートスーダンの裁判所が欠席のまま有罪とした。罪状は戦争犯罪・人道に対する罪・ジェノサイドの三つ。まず数字で押さえると、今回断罪されたのは計16名。弟で副司令官のアブドルラヒム・ハムダン・ダガロ、別の弟アル・コニ・ハムダン・ダガロ、西ダルフール司令官アブドルラフマン・ジュマ・バルカッラーらが名を連ねる。

2023年6月、州知事が殺されたエル・ジェネイナで何があったか

裁判の焦点になったのは、西ダルフールの州都エル・ジェネイナで起きた一連の出来事だった。2023年6月、州知事ハミス・アッバカルが殺害されたのを筆頭に、民間人への組織的攻撃、住宅街・学校・礼拝所の破壊と略奪が問われた。ヒューマン・ライツ・ウォッチが2024年5月に出した報告によれば、2023年4月から11月にかけてエル・ジェネイナ周辺で行われた作戦でマサリット人が標的にされ、国連調査団もRSFとアラブ系民兵による民族標的型攻撃を記録している。国際刑事裁判所(ICC)の副主任検察官も今月、RSF指導部と戦争犯罪を結びつける「具体的証拠がある」と述べており、国際的な包囲網はじわじわ縮まりつつある。

「The Sudan Founding Alliance, which includes the RSF, told the BBC it was 'sham trial' that 'does not even deserve a comment'.」(BBC News, 2026年7月13日)

RSFが「茶番」と切り捨てたのは、ある意味で予想通りの反応だろう。だがこの一言には、スーダン内戦の歪んだ現実が透けて見える。判決を下した裁判所があるポートスーダンは国軍の支配地域。RSFは今もスーダン西部の広域を実効支配しており、両者の間に停戦どころか交渉テーブルもない。ヘメディの現在地は公式には不明のまま、インターポール赤手配と全RSF資産没収が命じられた。

「内戦中の欠席裁判」は歴史上どこまで効いてきたか

欠席裁判による死刑判決という手法、じつは前例がないわけじゃない。旧ユーゴスラビア紛争後のミロシェビッチ裁判、カンボジア特別法廷など、紛争指導者の刑事責任を問う国際的な枠組みはいくつか機能してきた。ただしそれらは停戦後、ないし政権崩壊後に動き出したケース。RSFが健在のまま、しかも国内裁判所が出した判決となると、話は別の次元になってくる。インターポール赤手配は61カ国以上への拡散を意味するが、ヘメディが拠点とするとされる地域がどの国の管轄かによって、そもそも適用できるかどうかが変わってくる。今回の判決を「RSFの指揮系統の断罪」として記録する意義は小さくないが、実際に拘束・執行に結びつくかは全くの別問題だと言わざるをえない。

この先どうなる

ICCがRSF指導部への逮捕状を発行するかどうか、これが次の分水嶺になりそうだ。国内裁判所の判決と国際刑事裁判所の令状では、加盟国に課される法的義務の重さが全然違う。ICC令状があれば、ヘメディが足を踏み入れた国は理論上、拘束義務を負う。ダルフールジェノサイドをめぐる捜査はすでに進行中とされており、「具体的証拠がある」という発言が令状申請への布石と読めなくもない。スーダン内戦は2023年4月の勃発から3年以上が経過し、死者数・避難民数ともに現代最大規模の人道危機と言われる段階に来ている。法廷での断罪が積み重なることで、将来の和平交渉や国際支援の条件が変わっていく可能性はある。ただ今のところ、ヘメディが拘束される道筋は見えていない。