米イラン空爆の継続を受け、7月12日の米市場で起きたことはひと言で言えば「逃げ場がなかった」ということだ。株が売られるなら国債へ——そのセオリーが崩れた。株も国債も同時に下落するという、教科書に載らない展開が静かに広がっていた。
原油急騰がFRB利上げ観測に火をつけた理由
震源はエネルギー市場にある。米軍によるイラン追加空爆のニュースが伝わると、原油価格は一気に跳ね上がった。ガソリン代、輸送費、食品コスト——エネルギーはあらゆる物価に波及する。投資家が恐れたのはそこだった。インフレがぶり返すなら、FRBはまた利上げに踏み切るしかない。金利が上がれば既存の国債価格は下がる。だから国債も売られた、というわけだ。
「米国によるイランへの新たな空爆を受けて原油価格が上昇し、米連邦準備制度の利上げ観測が高まる中、株式と国債が同時に下落した。」(Bloomberg、2026年7月12日)
原油価格急騰が直接インフレ指標に響くまでには数週間かかる。それでも市場は先読みして動く。FRB議長のパウエル氏がここ数ヶ月、利下げに慎重な姿勢を崩していなかっただけに、「利上げ再開」シナリオは投資家の頭の隅にずっとあったらしい。今回の空爆がその引き金を引いた格好だ。
株・債券・原油が三つ巴になると何が起きるか
通常の地政学リスクなら、株安+国債高+原油高、という動きが典型だ。ところが今回は原油急騰がインフレ懸念を経由してFRB利上げ観測へと変換され、国債まで売りに押した。株安・債券安・原油高の三つ巴は2022年の利上げ局面を思い起こさせる。あの時は60/40ポートフォリオが機能しないと話題になった。今回も同じ構図がちらついている。
企業側への影響も見逃せない。エネルギーコストが上がれば製造業・物流・小売の利益率が削られる。家計では可処分所得が縮む。消費が鈍れば景気後退リスクが高まり、それはそれで株の重しになる。要するにどこを見ても明るい話がない、という状況だ。
この先どうなる
焦点は二つ。ひとつはイランとの交渉が再起動するかどうか。ホルムズ海峡を通るタンカーの動向が当面のバロメーターになりそうだ。過去のパターンを見ると、空爆直後に原油が急騰しても、外交チャンネルが動き始めると数日で上昇分の半分が戻ることも少なくない。もうひとつはFRBの次の発言だ。7月のFOMCでパウエル議長がエネルギー価格上昇に言及するかどうかで、FRB利上げ観測の強度が決まる。「一時的なショック」と切り捨てるか、「物価への警戒を強める」と踏み込むか——そこで相場の方向感がかなり変わってくるんじゃないか。原油価格急騰が続くなら、8月の消費者物価指数が次の関門になる。