中国戦略鉱物をめぐる覇権争いが、また一段と動いた。北京が国家の後ろ盾を持つ新たな鉱業投資会社を設立した、とBloombergが報じたのは2026年7月。狙いはアフリカ・中央アジアの資源地帯をより深く押さえること。米国とEUが数年かけて積み上げてきた「脱中国」の調達網を、資本力でひっくり返しにきた格好だ。
リチウム・コバルト・レアアース――すでに握っている手をさらに締める
EVの心臓部に使うリチウムとコバルト、半導体製造に欠かせないレアアース。これらの鉱物は「採掘→精錬→加工」という工程ごとに見ると、世界シェアの6〜7割前後を中国が握っているケースが多い。つまり欧米が「代替調達先を探す」と言っても、精錬段階で中国を通らざるを得ない構造がそもそも残っていた。今回の新会社はその手前、鉱山そのものへの出資や権益取得を担うらしい。川上から川下まで一気通貫でロックする、というのが北京の絵図とみていい。
「北京が支援する新たな鉱業投資ビークルが、中国の海外資源への支配力強化を目的として設立された。これは、米国と欧州が中国のサプライチェーン支配を抑制しようとする動きへの反撃として機能している」(Bloomberg)
アフリカのコバルト鉱山でいえば、コンゴ民主共和国の生産量に占める中国系企業の比率はすでに相当高い。中央アジアのレアアース鉱床でも、中国系ファンドや国営企業による投資が静かに積み上がってきた経緯がある。新会社はこうした案件を一元的に束ねる「投資プラットフォーム」として機能すると見られている。
米欧の脱中国戦略、3年越しの積み上げが崩れるか
米国はインフレ抑制法(IRA)で自国・同盟国産の鉱物調達を優遇し、EUも欧州重要原材料法(CRMA)で域内調達比率の目標を打ち出した。カナダやオーストラリアとの資源連携も加速してきた。ところが、である。資源国からすれば「中国が出す資金と西側が出す資金、どちらが速くて条件がいいか」を天秤にかけるだけの話になりやすい。新会社が国家信用をバックに競争力ある条件を提示してくれば、欧米企業が入札で後れをとる場面も出てくるんじゃないか。レアアース覇権を崩すためには、資金だけでなく外交・インフラ整備をセットにした「パッケージ型」の提案が必要と専門家は指摘するが、そこはまだ欧米の弱点として残っている。
日本はどうか。JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じた投融資や、レアアース代替技術の開発には取り組んできた。ただしサプライチェーン脱中国という観点で見ると、精錬・加工段階での中国依存は依然として高い。今回の新会社設立は日本の調達リスクにも直結する話だ。
この先どうなる
中国の新会社が実際にどの案件をターゲットにするかは、今後数ヶ月で輪郭が見えてくるはずだ。注目ポイントは三つ。一つ目は西アフリカ・中央アジアの鉱山入札への参加状況。二つ目は、米欧が対抗策として投資制限やリスト規制を強化するか否か。三つ目は、日本を含むG7が共同調達スキームを本格的に動かせるか。サプライチェーン脱中国の掛け声は何年も続いているが、実際の権益獲得競争では中国側が一手先を行き続けている——そう感じさせるニュースがまた一本増えた。