Vadym Yermolaiev(ヴァジム・イェルモライエフ)の名前が、モナコの爆弾事件で世界に飛んだ。現地時間6月29日夜21時直前、カジノと大富豪が集まるモナコの高級住宅街のロビーで小包爆弾が爆発。このウクライナ人実業家を含む3人が負傷し、うち2人はフランス・ニースの病院で重篤な状態と報じられている。

ボルトと散弾を詰めた爆弾、監視カメラが捉えた男

爆発が起きたのは、フランスとの国境に近いリュ・レヴェラン・ペール・ルイ・フローラ通りの集合住宅。モナコ政府トップのクリストフ・ミルマンがAFPに語ったところによると、爆発物の中身が生々しかった。

「爆発物にはボルトと散弾が含まれていたようだ」――モナコ政府代表クリストフ・ミルマン(AFP、2026年6月30日)

要するに、人体を引き裂くことを計算した構造。フランス紙ル・フィガロの報道によれば、爆発直前の防犯カメラ映像には、男がバックパックをロビーに置いて立ち去る様子がはっきり映っていたという。現場から100メートルほどの駐車場にいた近隣住民のハリ・リッチーはBBCに「信じられないほど大きな爆発音だった」と証言。11階の自室に上がると、救急隊員が建物から2人を担架で運び出す光景が見えたと話している。

容疑者はすでにフランス側へ――100人超の捜索網をくぐり抜けたのか

モナコ検察官のステファン・ティボーは、事件を「殺人未遂」として捜査していると明言。テロとは断定していないが、標的がVadym Yermolaievであることを示す状況証拠は重なっている。モナコ爆弾テロとして国際メディアが取り上げる中、ウクライナ外務省も在仏大使館を通じて当局と連絡を取り合っているとしている。
問題は逃走ルートだ。ミルマンは翌30日朝、仏BFMテレビで「容疑者はフランス側に移動したようだ」と述べた。モナコ政府の発表でも、爆発後に容疑者が隣接するフランスのコミューン・ボーソレイユへ徒歩で向かう姿が監視カメラに捉えられている。100人超の警察・救急隊員が即時展開したにもかかわらず、その網を抜けた格好で、現時点で身柄は確保されていない。

ウクライナ富豪暗殺未遂という切り口で見ると、背景にいくつかの疑問が浮かぶ。Vadym Yermolaievがモナコに拠点を置くのはなぜか、そして誰が指示したのか――モナコとフランス当局はそこを掘っているはずだが、公式発表はまだ出ていない。

この先どうなる

捜査の軸は二つに絞られる。まず容疑者の身柄確保。ボーソレイユからはフランス国内の交通網に接続でき、時間が経つほど逃走範囲は広がる。フランス当局との合同捜査がどこまで速く動けるかが鍵になりそうだ。もう一つは「依頼者」の特定。小包爆弾の精巧さと、ターゲットの人物像を組み合わせれば、単独の犯行とは考えにくいという見方が専門家の間では強い。ウクライナ外務省が正式な身元確認に動いている以上、外交ルートでの情報共有も加速するだろう。ウクライナ富豪暗殺未遂の「黒幕」が浮上するかどうか――そこが今後の最大の焦点になる。