ノルドストリーム爆破から2年半以上が経って、ドイツの司法がようやく動いた。ドイツ連邦検察は2025年、ウクライナ国籍の男・セルヒー・Kをパイプライン破壊の実行指揮者として正式起訴した。バルト海の海底に沈んだ数十億ドル規模のインフラを葬り、記録的な量のメタンをぶちまけたこの作戦——その司令塔とみなされた人物がついて被告席に立たされることになった。

セルヒー・K、7人の共犯者を率いた「作戦指揮役」とは

ドイツのプライバシー法の規定で、報道できるのは「セルヒー・K」という名前だけ。ドイツ公共放送DWが引用したドイツ国内メディアによれば、彼は7人の共犯者チームを統括し、ノルドストリーム1・2の計4本のパイプラインのうち3本を破壊する作戦を実行した、という見立てだ。

起訴内容は「民間エネルギーインフラへの攻撃」「爆発の引き起こし」「インフラの破壊」など複数に及ぶ。ベルリンの法律事務所メーナーカーは「水曜日に起訴状が送達された」とロイターに確認しており、AFPに対しても連邦検察が起訴の事実を認めている。

セルヒー・Kは昨年夏にイタリアで逮捕され、2024年11月にドイツへ引き渡されている。ドイツ当局はその約1か月後、ポーランドの首都ワルシャワ近郊でもう一人のウクライナ人容疑者を別の逮捕状に基づいて拘束した。捜査の糸は、着実に手繰り寄せられていたらしい。

「ドイツのプライバシー法によりセルヒー・Kとのみ特定されたウクライナ人容疑者は、ロシアからドイツへ天然ガスを輸送するパイプラインへの攻撃を指揮・調整したと疑われている。」(BBC News / ドイツ連邦検察 AFP確認)

当の本人は一貫して関与を否定している。「実行指揮者」と「実行者」の間には、まだいくつか埋まっていない空白がある。

ウクライナ政府の「関与否定」——どこまで額面通りに受け取れるか

ウクライナは今も公式に関与を否定している。ただ、ここが引っかかった。2022年9月26日の爆発は、ロシアによるウクライナ侵攻の7か月後というタイミングで起きた。パイプラインはロシアの天然ガスをドイツに送り続けていたわけで、ウクライナにとって「邪魔な存在」だったのは確かだ。

一方で、ロシア自身も疑惑の目を向けられてきた。米国、英国、あるいは別の第三者という説も当初から浮かんでいた。セルヒー・K起訴は「誰が手を動かしたか」への回答にはなっても、「誰が命令したか」には答えていない。ドイツ連邦検察の捜査は、まだそこまで到達していないってことだ。

独ウ関係への影響は、否定のしようがない。ドイツはウクライナへの軍事支援国のひとつであり、この起訴がどう政治的に受け止められるかは、今後の支援枠組みにも微妙な影を落としそうだ。

この先どうなる

セルヒー・Kの公判がドイツ国内で進む中、注目されるのは「命令系統の上にいる人物」が司法の場に引っ張り出されるかどうか。現時点ではウクライナ政府関係者の関与は立証されておらず、ドイツ側も慎重な姿勢を崩していない。一方、ポーランドで拘束されたもう一人のウクライナ人容疑者の動向も今後の焦点になるだろう。バルト海の海底に沈んだ「証拠」は、もう一度引き上げられることがあるのだろうか。真相が完全に解明されるとしたら、それはまだ先の話になりそうだ。