出生地主義をめぐる法廷闘争に、いったん決着がついた。連邦最高裁が修正第14条の保障を支持する判断を示したのは今週のこと。ところが判決から数時間も経たないうちに、トランプ氏はTruth Socialへ反応を投稿していた。
トランプ「残念だが、議会で容易に対処できる」の真意
投稿の内容は短く、しかし明確だった。
「最高裁は出生地主義による市民権を支持した。我が国にとって残念なことだが、我々は容易に対処できる」
司法で封じられたなら立法で突破する、という宣言に等しい。修正第14条は憲法条文そのものなので、廃止するには憲法改正か、少なくとも連邦法による解釈の上書きが必要になってくる。共和党が上下両院を掌握している現状、通常立法という経路は「夢物語」とは言い切れなくなってきた。
年間50万人——その数字が意味するもの
出生地主義が廃止されると直接影響を受けるのは、年間およそ50万人の新生児とされている。非正規滞在者や短期ビザ保有者を親に持つ子どもたちで、アメリカで生まれた瞬間に自動的に市民権が付与されてきた層だ。
この仕組みは南北戦争後の1868年、旧奴隷に市民権を与えるために成立した修正第14条に由来する。150年以上にわたって維持されてきた制度を、移民政策の一環として変えようという発想自体、歴史的にも異例の試みといっていい。
今回の最高裁判断は、トランプ政権が1月に署名した「出生地主義による市民権の制限」を定める大統領令に対して複数の州が差し止めを求めていた裁判の延長線上にある。下級審が軒並み大統領令を違憲と判断してきた流れを、最高裁もひとまず追認した格好だ。
この先どうなる
焦点は議会に移る。共和党内でも修正第14条の扱いには温度差があって、改憲手続きには上下両院それぞれ3分の2以上の賛成と4分の3以上の州議会の批准が必要になる。これを現在の議席数で達成するのは現実的ではない。
一方、「出生地主義は憲法上の権利ではなく立法政策の問題だ」という法解釈を連邦法として成立させようとする動きは、共和党の一部議員の間で以前から存在してきた。移民政策の立法をめぐる攻防が本格化するのはこれからで、秋以降の議会会期が一つの山場になりそうだ。最高裁が「ノー」と言っても、話はここで終わらない——というのが今週起きたことの大きな意味じゃないかと思う。