ホルムズ海峡停戦崩壊まで、あと一歩だったらしい。6月17日に署名された14項目の覚書(MoU)は、わずか10日余りで火の海に投げ込まれた。イランの飛翔体が海峡内の貨物船を直撃したのが発端で、米軍がイラン複数拠点を報復爆撃、イランはクウェートとバーレーンの米軍基地に反撃——という連鎖が48時間以内に起きた。それでも双方は「stand down」に合意し、協議の火を消さなかった。

クウェート・バーレーン被弾、それでも「自由な航行」を約束した理由

米中央軍(Centcom)は今回の報復爆撃を「商業船舶への継続的な侵略への直接対応」と位置づけた。イランの反撃でクウェートとバーレーンの米軍基地が狙われたが、米側は「いずれも目標に届かず、死傷者・損害ゼロ」と発表している。

ここで引っかかったのが、MoU第何条に当たるかの争いだ。MoUには「60日間、商業船舶の安全な通過に最大限の努力を払う」という条項があった。イランが先に貨物船を攻撃したのか、それとも米国が先に違反したのか——両国が互いに「違反者はそっち」と主張し、BBCも経緯の確認に苦労している状況だった。

「米当局者はCBSニュースに対し、湾岸の航路を船舶が『自由に』通行できるようになると伝え、戦争の完全終結に向けた協議を継続すると述べた。」(BBC News / CBS News、2026年6月29日)

世界の原油・ガス輸送の約20%を通すホルムズの「再封鎖」は、どちらにとっても得策じゃない。その共通認識が、砲火の中でも協議継続という判断を引き出したとみていいだろう。

ウィトコフ&クシュナーがドーハへ——「イランが会合を要請した」とトランプが投稿

面白いのがトランプのTruth Social投稿のタイミングだ。イランのガリババディ外務次官が「今週の技術協議の予定はない」と否定した直後に、トランプは大文字で「イランが会合を要請した。明日ドーハで行われる!」と書き込んだ。どちらが本当に先に「やろう」と言ったか、という主導権争いが文面ににじんでいる。

ホワイトハウス報道官のカロライン・レヴィットはFoxニュースで、スティーブ・ウィトコフ特使とジャレッド・クシュナーが「MoUの議論を続けるため」ドーハへ向かうと確認した。ウィトコフ&クシュナー ドーハ協議は、停戦後初の本格的な対面交渉になる可能性がある。米イラン MoU 再攻撃という最悪の展開を経ながら、交渉テーブルだけは守られた格好だ。

この先どうなる

ドーハ会合で最大の焦点になるのは、MoUの「違反認定メカニズム」の修正だろう。現状の14項目には、どちらが違反したかを裁定する第三者機関が存在しない。双方が「先に撃ったのはあいつ」と主張できるまま60日間の船舶安全条項を続けるのは、今回と同じ火種を残すことになる。

ホルムズが実質封鎖されていた2〜6月初旬、世界の原油価格は大きく揺れた。再び「崩壊寸前」の週末があれば、市場の反応はより激しくなってくる可能性が高い。ウィトコフとクシュナーがドーハで何を手土産に持ち帰るか——次の48時間、ニュースから目が離せない。