MT菊丸が炎上した瞬間、今月署名されたばかりのホルムズ合意は終わっていた。6月28日(現地時間)、IRGCの一方向攻撃ドローンがホルムズ海峡でパナマ船籍タンカー「MT菊丸」を直撃。米中央軍(CENTCOM)は即座にイラン国内および海峡周辺の10か所の軍事目標を空爆で破壊し、IRGCは報復としてクウェートのアリ・アル・サレム基地とバーレーンの米第5艦隊港湾施設に弾道ミサイルとドローンを撃ち込んだ。双方ともに「停戦を破ったのは相手側だ」と非難し合っており、わずか数日前に締結されたホルムズ合意は事実上の白紙に戻った格好だ。
MT菊丸攻撃から10目標空爆まで、6時間の連鎖
CENTCOMの声明によれば、米軍の打撃対象は軍事装備・通信システム・防空サイト・ドローン貯蔵施設など10か所。IRGCが「MT菊丸に対峙した海軍部隊への攻撃」と呼んだ空爆への正当化とは真逆の説明で、米側は「商業船舶への継続的な侵略への直接的な対応」と位置づけている。
「イランは停戦合意を遵守する機会を与えられたが、その軍がパナマ船籍タンカー『MT菊丸』に一方向攻撃ドローンで攻撃を加えたことで、その機会を自ら選ばなかった。」(US Central Command 声明より)
一方、IRGCの国営メディア向け声明はやや異なる文脈を示している。今月署名された覚書(MoU)の下、イランはホルムズ海峡での通航管理権限を持つと主張。「違反船舶は今後、より断固たる対応を受ける」と宣言したうえで、クウェートとバーレーンの「8か所の重要インフラを破壊した」と発表した。米側はロイターへの確認でこれを否定はせず、「米側に死傷者も施設への重大被害もない」と述べるにとどめた。IRGC弾道ミサイルの実際の着弾規模については現時点で独立した確認が取れていない。
ホルムズ停戦崩壊で原油・タンカー保険料に何が起きるか
市場が注目するのは、停戦崩壊が原油価格とタンカー保険料にどう跳ね返るかだ。直近の動画バズ実績でも「原油4.7%急落 ホルムズ再開合意」が1367再生を記録しており、ホルムズ絡みのニュースは原油市場と直結して読まれている。今回のケースでは合意崩壊という逆方向のシナリオ。リスクプレミアムの再拡大、タンカー保険料の急騰、そして日本を含むアジア向け原油ルートへの影響が現実のものになりつつある。「MT菊丸」という日本語名の船名が示す通り、日本の海運・エネルギー企業にとっても対岸の火事ではない。
この先どうなる
IRGCの声明には「いかなる名目での敵対行為にも壊滅的な反撃を行う」という一文が含まれており、エスカレーションの蓋は開いたままだ。イラン外務省も米軍の空爆を「停戦の粗暴な違反」と断じ、「プロセスの完全停止につながる」と警告している。米側が人的被害ゼロを強調しつつも追加制裁や軍事的圧力を維持するなら、ホルムズ海峡は再び世界の原油供給のボトルネックとして機能し始めるかもしれない。次の一手は、どちらが先に「停戦再交渉」のテーブルに戻るかにかかっている——もしくは、どちらも戻らないか、だ。