トランプ利益相反をめぐる問題が、また一段階ざらついた話になってきた。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、米国とカザフスタンが締結した国家間合意により、トランプ大統領の息子たちおよびハワード・ルトニック商務長官と関係を持つ米国人投資家グループが、世界最大級の未開発タングステン鉱床へのアクセス権を手に入れたという。取引規模は10億ドル規模とされている。

タングステンは今、なぜここまで価値を持つのか

タングステンという金属、聞き慣れない人も多いかもしれないが、半導体製造ツールや装甲貫通弾の素材として防衛・ハイテク産業には欠かせない素材だ。そして現時点で、世界供給の約80%を中国が握っている。

米中対立が長期化するなかで、西側諸国がタングステンの代替調達先を探しているのは当然の流れ。カザフスタンはその有力候補として浮上していた。資源埋蔵量は世界トップクラスで、開発が進めば中国依存を大きく切り下げられる可能性がある。安全保障上の理由としては筋が通っている、ように見える。

「米国とカザフスタンの間で結ばれた合意により、大統領および商務長官と関係を持つ米国人投資家グループが、世界最大級の未開発タングステン鉱床の一つへのアクセス権を獲得した」(NYTより)

ただ、ここで引っかかるのが「誰が得をするか」という点だ。カザフスタンタングステンの利権を手にしたのが、国家安全保障の専門家ではなく、大統領の家族と閣僚周辺の投資家グループだったというのは偶然にしては出来すぎている。

ルトニック長官の名前が出てきた意味

ハワード・ルトニックは元ウォール街の大物で、2025年にトランプ政権の商務長官に就任した。商務省は輸出規制や通商交渉を所管しており、資源開発案件とも無縁ではない。

今回、彼の名前がこの取引に絡んで報じられたことで、政権内の「回路」が見えてきた格好だ。トランプ大統領が外交で扉を開き、長官周辺が商業的に入り込む。こうした流れが一度でも成立してしまうと、次の外交判断にも同じ疑いがかかり続ける。それが問題の重さだろう。

トランプファミリーをめぐっては、サウジアラビアとのゴルフリゾート契約やアラブ首長国連邦との投資合意など、大統領在任中の商業関与がすでに複数報告されている。今回のカザフスタン案件はその延長線上にあるが、戦略物資の利権という点で一段と安全保障の話と絡み合っている。

この先どうなる

議会の民主党側はすでに調査を求める声を上げているが、共和党が上下両院を抑えている現状では、公式な聴聞会に発展する可能性は現時点で低い。ただ、NYTがこれだけの詳細を掘り起こしてきた以上、続報が出ないはずはない。

カザフスタン側も、米国との関係を保ちながら中国・ロシアとのバランスを取る「多方向外交」を続けてきた国だ。この件が国内でどう受け取られるかによっては、合意の実行フェーズで政治的な摩擦が生じる可能性もある。

10億ドルのタングステン鉱床をめぐるこの話、まだ序章らしい。