ホルムズ停戦崩壊まで、あと一手かもしれない。6月17日に署名されたばかりの米イラン14項目合意が、わずか9日で崩壊の瀬戸際に立たされた。木曜日、ホルムズ海峡を航行中の貨物船がドローン攻撃を受け、数千人規模の船員退避計画が中断。翌金曜、米中央軍(Centcom)は「停戦への明白な違反」と断定してミサイル・ドローン貯蔵施設と沿岸レーダー拠点を精密打撃した。
9日で終わった合意——米中央軍が語った「明白な違反」
Centcomが発表した声明はシンプルだった。「イランによる商業船舶への不当な攻撃は、停戦を明らかに違反するものだ」。今回の合意には「60日間、無料で商業船舶の安全通航に最善を尽くす」という条項が明記されていた。それがわずか9日で破られた格好になる。
イラン側の言い分は違う。テヘランは「貨物船が許可されていないルートを通行したため攻撃した」と主張。だが、Centcomはそれを「さまざまな口実」と一蹴して打撃に踏み切った。どちらの言い分が正確かは現時点では確認できていないが、双方が自分たちの行動を正当化している構図は、2月の全面衝突前夜と重なってみえる。
「イラン軍による商業船舶への不当な攻撃は、明らかに停戦を違反するものである。さらに、イランの危険な行動は、重要な国際貿易回廊としてますます機能するこの海域における航行の自由を損なうものだ。」(US Central Command)
注目すべきはIRGCの反応の速さだった。米軍の打撃直後、革命防衛隊は「米軍拠点を反撃した」と宣言し、「次に攻撃されれば今回を上回る規模で応じる」と警告した。具体的な拠点は明かされていないが、この「エスカレーション予告」の言い方が引っかかった。単なる強がりじゃなく、実際に動ける準備を整えた上での宣言と読む専門家も多い。
原油価格は再び動くのか——2月の再現シナリオ
2月末にホルムズ海峡が事実上封鎖されたとき、世界の原油価格は急騰し、肥料など他の主要物資の輸送も寸断された。それが今回の14項目合意の背景にある。スイスでの署名式後には原油が4.7%急落という局面もあった。つまり市場はすでに「停戦定着」を一定程度織り込み始めていたらしい。IRGC反撃宣言が再び流れを反転させるかどうか、週明けのアジア市場が最初の試金石になりそうだ。
Centcomは「商業船舶の安全通航調整と支援を続ける」と宣言しており、米軍がホルムズから引くつもりはないことは明らか。一方でイランも国内世論向けに「無傷では引かない」というメッセージを発し続けなければならない事情がある。この二重の縛りが、次の一手を予測しにくくしている。
この先どうなる
最悪のシナリオは、IRGCの「さらに大規模な反撃」が実行され、米軍が第三弾の打撃を繰り出すループに入ることだ。一方で、外交ルートが完全に閉じているわけでもない。14項目合意にはまだ双方の署名が残っており、「どちらが先に正式破棄を宣言するか」というチキンレースの側面もある。今後72時間の動きが、この合意が「9日の死亡記事」になるかどうかの分岐点になるだろう。原油市場もそこを見ている。
