デジタルサービス税をめぐる攻防が、また始まった。トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」に投稿し、欧州各国がGoogleやMetaなど米テクノロジー企業の売上を標的にした課税を協議しているとして、「実施されれば関税とみなし相応の対応をとる」と明言した。鉄鋼・アルミをめぐる米EU交渉が進行中のこのタイミングで、なぜDSTカードを切ってきたのか。そこが引っかかった。

DSTとは何か――Google・Metaに課税する仕組みをおさらい

デジタルサービス税(DST)は、フランスが2019年に先行導入し、英国・スペイン・イタリアなども追随した課税制度。簡単に言えば、物理的な拠点が少なくても巨大な売上を稼ぐプラットフォーム企業に、売上の一定割合(多くは2〜3%)を課す仕組みだ。

標的はほぼ米国企業に限られる。欧州側の言い分は「フェアな税負担」だが、米国からすれば「自国企業への差別課税」に映る。2020〜2021年にかけて米国が対仏報復関税を発動する寸前まで行き、OECDの多国間協議(いわゆるピラー1)で一時棚上げされた経緯がある。その交渉が行き詰まりを見せ始めたいま、欧州各国が独自導入へ動き出しているというのが今回の背景だ。

「多くの欧州諸国が、米国テクノロジー企業を標的としたデジタルサービス税の早急な導入を議論している。これが実施された場合、関税とみなし、相応の対応をとる。」
— Donald J. Trump(Truth Social, 2025)

トランプ対欧州関税という図式は今に始まった話ではない。ただ今回の警告は鉄鋼・アルミの関税交渉が佳境に入るタイミングと重なっており、交渉テーブルに圧力をかける「追加カード」として機能している可能性が高い。

日本企業はどこで食らうか――プラットフォーム依存のコスト転嫁リスク

米EU通商摩擦と聞くと、日本は傍観者に見えるかもしれない。ところが実態はちょっと違う。

第一のルートは広告コスト。日本企業がGoogle広告やMeta広告に年間数億〜数十億円を投じているケースは珍しくない。DSTで米プラットフォームのコスト構造が変われば、広告単価への転嫁が起きやすい。特にEC・D2Cブランドや中堅メーカーはもろに影響を受ける。

第二のルートはクラウド・SaaS費用。AWSやMicrosoft Azureなどに月次コストを払う企業も、同様の転嫁圧力にさらされうる。

第三は為替と株式市場を経由した間接ルート。米EU貿易戦争が再点火すれば、リスクオフのドル高・円安圧力が働き、輸入コスト上昇につながるシナリオもある。直撃ではないが、無関係とも言い切れない。

さらに見落とされがちなのは、日本自身も「DST類似の議論」を国内で抱えている点だ。デジタル課税の国際標準が揺らげば、日本の制度設計にも波及しかねない。

この先どうなる

最大の焦点はOECD多国間交渉の行方だ。ピラー1が完全に崩れれば、各国が独自DSTへ走り、米国が個別に報復関税を乱発する「デジタル関税戦争」が現実味を帯びる。欧州側は米国の圧力に屈するか、対抗措置でエスカレートするか、二択を迫られている状況だ。

鉄鋼・アルミ交渉の決着時期とDST問題が連動して動く可能性がある以上、今後数週間の米EU協議の動向は要ウォッチ。日本企業にとっては「海の向こうの話」で済まないかもしれない、そういう局面に差し掛かっている。