米軍イラン攻撃の報を、トランプ大統領はSNSに自ら書き込むかたちで世界に知らせた。ターゲットはミサイル・ドローン貯蔵施設だけじゃない。ペルシャ湾とホルムズ海峡を24時間監視してきた沿岸レーダーサイトまで叩いたという。レーダーが黙れば、海峡を通る船は「見えない目」の代わりを自前で用意しなければならない。そのコストは最終的に、ガソリンスタンドや電気料金の数字として私たちの前に現れる。

ホルムズ海峡レーダー破壊で何が変わるのか

ホルムズ海峡は幅にして最狭部約33km。世界の原油輸送量の約20%がここを通過する。イランの沿岸レーダーは長年、この海峡を行き交うタンカーや軍艦の動向を把握する「番人」だった。それが今回の攻撃で機能を失ったとすれば、イラン側の海峡支配力は目に見えて低下する。

一方で、レーダー網の空白はイラン海軍や革命防衛隊による「目視・近距離」での対応にシフトさせる可能性もある。海峡周辺での小型艇による嫌がらせや機雷敷設リスクは、むしろ読みにくくなるかもしれない。タンカー各社のリスク判断が変わり、保険料率が動けば、それが原油コストに乗ってくる。

「米国の航空機が、イランのミサイル・ドローン貯蔵施設および沿岸レーダー施設を攻撃した」――Donald J. Trump(Truth Social)

ドローン基地空爆についても見落とせない点がある。イランのドローン技術はロシアへの供与でその性能が世界に知れ渡った。今回の攻撃で貯蔵施設を潰せたとしても、製造ラインまで叩いたかどうかは不明。軍事的な抑止効果がどこまで続くかは、今後の衛星画像や情報開示次第といったところだ。

日本の電気代・ガソリン代への直撃ルートを追う

日本の原油輸入の約9割は中東依存。その大半がホルムズ海峡を通過してくる。今回の米軍イラン攻撃を受けて、原油先物市場が一時的にせよ上振れるシナリオは十分ありえた。ただし、直近ではホルムズ再開合意や供給増観測で原油が急落していた局面でもある。今回の攻撃がその流れを反転させるかどうかがポイントになる。

LNG(液化天然ガス)価格も連動しやすい。電力会社の燃料費調整額が上がれば、企業の製造コストを押し上げ、家庭の光熱費にも跳ね返ってくる。為替がドル高に振れれば、円建てのダメージはさらに増幅される構図だ。「対岸の火事」とは言いにくい話らしい。

この先どうなる

イランの出方が最大の変数になりそうだ。核交渉が並行して動いている状況で、報復に踏み切れば交渉テーブルは吹き飛ぶ。沈黙を保てば内部の強硬派が黙っていない。どちらに転んでも「次の一手」が読みにくい局面に入った。

市場は短期的な原油価格の振れよりも、ホルムズ海峡の通航保証がどう維持されるかを見ている。米海軍のプレゼンスが強まればタンカー各社の安心感につながる半面、緊張が続けば保険料率の高止まりが長引く。日本政府のエネルギー備蓄(国家備蓄は約145日分)がバッファになるとはいえ、長期化すれば市場への影響は避けられない。次の動きは、イランの最高指導者ハメネイ師の声明とトランプの次のSNS投稿、どちらが先に来るかにかかっている。