SBF有罪評決が下った瞬間、法廷の傍聴席は静まり返ったという。マンハッタン連邦陪審が詐欺・共謀罪の全7件で有罪と認定したサム・バンクマン=フリード——かつて「暗号資産界のJPモルガン」とまで呼ばれた男が、最大懲役110年という数字を背負うことになった。
110億ドルはどこへ消えたのか
FTX破綻詐欺の核心は、驚くほどシンプルだった。顧客がFTXに預けた資産が、そのまま自社の取引会社アラメダ・リサーチへ流れ込んでいた。アラメダはその資金で投機的なポジションを積み上げ、さらにバンクマン=フリード自身の政治献金や豪華不動産の購入にも充てていたことが裁判で次々と明らかになった。
2022年11月、FTXが突如経営破綻したとき、顧客の手元に戻ってきたのはほぼゼロ。消えた資産は約110億ドルにのぼる。複数の共同創業者が検察側の証人として法廷に立ち、バンクマン=フリードが資金の流れを把握していたと証言したことが評決を決定づけたとみられる。
経営破綻した暗号資産取引所FTXの創業者サム・バンクマン=フリードは、マンハッタン連邦陪審によって詐欺および共謀罪の全7件の訴因について有罪とされた。(The Wall Street Journal)
被告側は「自分は善意で動いていた、会計上のミスだった」と主張し続けたが、陪審はおよそ4時間の審議でその主張を退けた。4時間という短さが、評決の重さを逆に際立たせている。
FTX崩壊が残した暗号資産規制強化への圧力
この裁判が業界に投げかけた問いは、一人の詐欺師の処罰で終わらない。FTX崩壊後、米国では暗号資産規制強化を求める声が議会でも高まり、SECによる取引所への調査が相次いだ。「自主規制が機能する」という業界の長年の建前が、110億ドルという数字の前で完全に崩れた格好だ。
投資家保護の仕組みが株式市場並みに整っていれば、これほどの被害は出なかったはずとの見方もある。だからこそこの判決は、規制当局にとって「やはり必要だった」という論拠として使われていくだろう。
この先どうなる
量刑宣告は数か月後の見通しで、連邦量刑ガイドラインに基づけば実質的な終身刑に近い刑期になる可能性がある。バンクマン=フリードの弁護団は控訴を示唆しており、法廷闘争はまだ続く。
一方、暗号資産規制強化の議論は米国だけでなく欧州や日本にも飛び火している。FTX破綻詐欺がひとつの「証拠」として機能し続ける以上、業界が規制の波を避けるのはもはや難しいんじゃないか——そんな空気が、市場参加者の間でじわじわ広がっている。
