ホルムズ海峡での船舶攻撃が確認されたのは、米イラン和平合意に署名してからまだ数日も経っていないタイミングだった。世界の原油輸送の約20%が通過するこの海峡で、それも「事前に警告が出ていた」直後に起きたとなると、単なる偶発事故とは見にくい。
イラン強硬派が和平合意に「待った」をかけたのか
今回の攻撃について、米国とイランの当局者双方が関与を認めているという。ここが引っかかった点で、イラン政府が公式に関与しているのか、それとも強硬派が独自に動いたのかで話がまるで変わってくる。
テヘランはこの攻撃の前から、ホルムズ海峡での海運妨害を警告していた。つまり「やるよ」と言っていた上でやった、ということらしい。イラン国内では、3000億ドル規模の復興合意と核放棄の枠組みを受け入れることへの反発が根強く、強硬派が「合意潰し」を狙って動いた可能性は否定できない。
「この攻撃は米国とイランの当局者双方が確認したもので、テヘランが同航路での海運妨害を警告した後、ワシントンが平和合意への地域的支持を求める中で発生した」(The New York Times)
ワシントンがまさに「地域的支持を取り付けようとしていた最中」というタイミングを狙ったとすれば、外交的なダメージは計算済みだったんじゃないか。
ルビオがバーレーンに飛んだ理由
ルビオ国務長官は攻撃を受けてすぐ、バーレーンで緊急協議に入った。バーレーンは米海軍第5艦隊の拠点で、湾岸諸国の中でも米国との連携が最も緊密な国のひとつ。ここで協議するということは、軍事的オプションも含めた対応の幅を確認しにいったとも読める。
イラン強硬派と和平合意の間で板挟みになっているのは、実はイラン側の穏健派も同じで、合意を推し進めたい勢力にとっては今回の攻撃は最悪のタイミングだったはず。一方のルビオも、3000億ドルの復興合意を成果として打ち出したい立場から、ここで引くわけにはいかない。双方が「引けない理由」を抱えたまま交渉が続くわけで、それが今の不安定さの根っこにある。
この先どうなる
当面の焦点は、この攻撃をイラン政府の「公式意思」とみなすかどうかだろう。強硬派による独走と判断できれば、合意の枠組みは維持される可能性が残る。ただ、ホルムズ海峡という場所の象徴性を考えると、米国が何もしなければ「合意後も抑止が効いていない」というメッセージになりかねない。ルビオの緊急協議がどこまで地域の支持をつなぎとめられるか、次の72時間が分岐点になりそうだ。原油市場がどう反応するかも、続報で確認しておく価値がある。
