ホルムズ海峡の通航再開から6日で172隻が通過した——数字だけ見ると「再開した」で終わりそうだが、その内訳を掘ると、少し別の絵が浮かび上がってくる。

172隻の内側:400万バレルを運んだ「元制裁船」5隻

海事情報会社Kplerのデータによれば、合意署名翌日の6月18日から少なくとも172隻が海峡を通過。土曜日だけで42隻が動いた。ただし戦前の日平均は138隻。6日で172隻という数字は、1日あたり約29隻ペースに過ぎず、まだ回復とは言い難い水準だった。

さらに現時点でも250隻超のタンカーと440隻の貨物船が湾内で足止めされたまま。8割超が停泊か投錨中で、実際に荷物を積んでいると見られるのは6隻に1隻程度らしい。

目を引いたのはイラン原油の動きだ。米財務省は数十年にわたって続けてきた制裁を一時的に緩和し、イラン産原油・石油化学製品の販売を2025年8月21日まで認めるライセンスを発行。月曜日だけで、かつて米国の制裁リストに載っていた5隻が最大400万バレルを積んで海峡を抜けた。

「At least 30 tankers have departed from the Gulf laden with Iranian oil and petrochemicals since the deal was agreed.(合意以降、少なくとも30隻がイランの原油・石油化学製品を積んで湾から出港した)」— BBC Verify / United Against Nuclear Iran

イラン原油の制裁免除は期限付きとはいえ、動き出した量は小さくない。合意から6日で30隻超というのは、かなりのペースじゃないかと感じた。

全船が「北側ルート」を選んだ:米国推奨ルートはゼロ

もう一点、見落としたくないのがルートの問題だった。米国は南側のオマーン沿岸ルートを推奨していたが、通過した船のすべてがイラン承認の北側ルート、つまりイラン領海寄りのルートを選んでいる。例外なし。

これは偶然ではなく、保険・安全確保の面でイラン側のお墨付きを得ておく方が現実的と船会社が判断した結果だろう。LNG輸送を担う4隻もカタールのラスラファン港に向けて同ルートを航行した。

合意の文面がどうあれ、実際に船を動かすオペレーション上の判断が積み重なった結果として、北側ルートが「デファクトスタンダード」になりつつある——そういう読み方もできる。ブレント原油先物価格は、戦争開始以来の最安値圏まで下落しており、市場は少なくとも「最悪期は過ぎた」と読んでいるようだ。

この先どうなる

焦点は三つある。一つ目はイラン原油の制裁免除期限、8月21日以降どうなるか。更新されるのか、それとも交渉材料として使われるのか、まだ見えていない。

二つ目は湾内で足止め中の690隻超の動向。本格的な通航再開には、1日138隻ペースへの回帰が必要で、現状はまだその2割程度の日もある。

三つ目は「どちらのルートが国際標準になるか」という地味だが重いテーマ。北側ルートの事実上の定着が続けば、海峡通行に関するイランの発言力は書類上の合意文書よりずっと大きくなる可能性がある。次の合意交渉でそれが数字として出てくるかどうか、注目しておく価値はありそうだ。