Keir Starmer resignationを、現職の米大統領が公開投稿で予言する——こんなことが起きるのかと、正直目を疑った。トランプはTruth Socialに「スターマーはイギリス首相を辞任するだろう。彼は二つの非常に重要な問題で大きく失敗した」と書き込んだ。同盟国の現職首脳に向けて、名指しで退場を宣告するケースは近代外交史でもほぼ前例がない。
トランプが名指しした「二大失策」とは何か
スターマー政権が発足したのは2024年夏。労働党が14年ぶりに政権を奪還した時点では、英国内の期待値はそれなりに高かった。ところが1年も経たないうちに支持率は急落している。
トランプが指摘した二つの問題、一つ目は鉄鋼産業をめぐる政策だ。スターマー政権はポートタルボット製鉄所などの救済をめぐって国有化の方向を模索したが、労働組合との調整が難航し、雇用削減を止められなかった。「国有化」と「雇用守護」を掲げた労働党の看板が、むしろ傷ついた格好だった。
二つ目は移民・難民政策。英仏海峡を渡る小型ボートによる不法入国は高止まりしたまま。スターマーは前保守党政権のルワンダ移送計画を廃止したものの、代替策は有効に機能しておらず、世論からは「やめたなら自分でやれ」という声が上がり続けている。労働党支持層の中でも不満が噴出しており、党内の求心力も確実に落ちているらしい。
「キア・スターマーはイギリス首相を辞任するだろう。彼は二つの非常に重要な問題で大きく失敗した」——Donald J. Trump(Truth Social)
この一文が「単なる悪口」で終わらないのは、Trump Truth Social UKというキーワードが示す通り、発信プラットフォームが世界に向けて開かれた政治的舞台だからだ。英与党内でも「アメリカに利用されている」という声と「無視すればいい」という声が割れており、スターマー陣営の対応は今のところ沈黙に近い。
英米「特別な関係」、ここまで可視化された亀裂は初めてじゃないか
英米特別な関係 亀裂という表現は過去にも何度か使われてきたが、今回ほど世界に向けてあからさまに可視化されたことはなかった。チャーチル以来続く「特別な関係」は、外交的な軋轢があっても水面下で処理されてきた。それをトランプは公開の場で壊している、というのが欧州外交筋の受け止め方だ。
スターマーは就任直後、トランプとの関係修復を優先課題に位置づけ、ホワイトハウスを早期に訪問している。それでもトランプからこれだけの言葉が出てきたということは、ウクライナ支援やNATO費用負担をめぐる英米間の温度差が想定以上に深いとも読める。「口撃」で終わるか、政策的な圧力に転化するかが次の焦点になってくる。
この先どうなる
スターマーにとって最大の関門は、国内と対米の二正面作戦になりそうだ。秋の予算審議に向けて財政余地は乏しく、移民問題も短期解決策が見当たらない。労働党内からの造反票が増えれば、指導部への圧力は一段と高まる。一方でトランプ側は「予言」通りの結果を待つ構えで、何かあればすかさず再投稿するだろう。英米特別な関係 亀裂が実際の外交コストに転化するタイミング、そこが当面の観測ポイントになってくる。
