クリミア燃料停止が、ついに緊急令という形で表面化した。ウクライナのドローンがケルチの石油貯蔵施設を夜間に直撃し、4名が死亡、28名が負傷。ロシアが任命したアクショーノフ知事はほぼ即座に動き、ガソリンスタンドでの一般・民間企業向け販売を全面停止すると宣言した。半島全土のドライバーが給油できなくなるという、異例の措置である。

アクショーノフ緊急令の中身——民間は「後回し」どころか「全面禁止」

知事の発表はかなり踏み込んだ内容だった。

「個人および民間企業はガソリンスタンドへの入店を断られ、燃料はクリミアの『機能と安全』を確保する政府機関にのみ販売される」

要するに、一般市民が給油しようとしても店に入れてもらえない、という状態だ。「今後の対応は改めて発表する」とも述べており、解除の目処は示されていない。もともとクリミアでは燃料の割当制が続いていたが、今回の措置はその延長ではなく、段階が一つ上がった感じがある。

同日、ゼレンスキー大統領はウクライナ軍がケルチに加え、クリミアと海峡を挟んで隣接するロシアのクラスノダール地方の石油輸送施設も攻撃したと明かした。その攻撃で旅客フェリーに乗っていた1名が死亡したと地元当局が報告している。大統領は「ロシアの残虐な攻撃への正当な反撃だ」と述べ、軍事的な合理性を強調した。

ケルチ海峡という「一本道」——繰り返し叩かれてきた急所

地図を見ると、クリミア半島の補給路がいかに細いかがわかる。2014年の不法併合以降、半島はロシア本土とケルチ海峡橋でつながる形になったが、その橋自体がすでに複数回攻撃を受けている。海上ルートも無傷ではなく、フェリーや輸送船への攻撃が繰り返されてきた。

今回のケルチ油槽攻撃とクラスノダールの施設への同時攻撃は、この「一本道」を両側から締める動きとも読める。燃料が入ってこなければ、駐留するロシア軍の車両・兵器の稼働にも直接影響する。ウクライナ長距離ドローンによる継続的な打撃が、占領地の兵站をどこまで圧迫できるかを試す局面が続いている。

この先どうなる

アクショーノフ知事は「追加方針は後日発表」と述べるにとどまり、再開の条件は不明なままだ。夏に向けてクリミアへの補給ルートへの攻撃がさらに続けば、民間の燃料制限が長期化する可能性がある。一方、ロシア側はケルチ橋の補修と海上輸送の代替化を進めてきたが、今回のように複数拠点を同時に狙われると防ぎきれない場面も出てくるだろう。ウクライナ長距離ドローンの精度と射程が上がり続けている今、クリミアの兵站圧迫という戦略が次の転換点を迎えるのは、そう遠くないかもしれない。