JMICが動いた。合同海事情報センターが、ホルムズ海峡南航路についてAISトランスポンダーを常時オンにした状態で昼夜問わず通過できると正式に表明したと報じられた。世界の石油輸送量の約20パーセントが通過するこの海峡で、夜間の航行自粛が続いていた時期を考えると、これはかなり大きな転換点に映る。
夜間自粛が崩れた日——南航路に何が起きたのか
ホルムズ海峡南航路は、イランの領海から距離を置ける分、民間船にとって比較的リスクが低いとされるルートだ。ただし近年は夜間の視認性低下を狙った拿捕や妨害事案が相次ぎ、多くの船社が夜間通過を実質的に避けていた。その慣行を変えうる指針が、今回のJMIC表明だったわけだ。
AISトランスポンダーを常時オンにするという条件も興味深い。これは「自分の位置を常に可視化しておけ」ということであり、軍や関係機関が常時追跡できる状態を維持することで抑止力を働かせようという発想だろう。逆に言えば、AISをオフにした隠密行動は今後も推奨されない、というメッセージでもある。
「主要な海軍情報機関によると、船舶はトランスポンダー信号をオンにした状態で、昼夜を問わずホルムズ海峡の南航路を通過することを検討できる」(Bloomberg報道より)
「検討できる」という表現にとどまっている点は見逃せない。安全を保証するわけではなく、あくまで「通れる状況にある」という判断を示したにすぎない。タンカー会社のリスク部門がこれをどう読むかで、実際の通航数は変わってくる。
原油市場への波及——20%ルートが動くとき
ホルムズ海峡南航路の通行可否は、原油価格に直結する。直近のバズでも「原油4.7%急落 ホルムズ再開合意」というニュースが高い注目を集めていた通り、このルートをめぐる情報は市場の神経に触れやすい。今回の指針が実際の通航量増加につながれば、供給懸念の後退として原油先物に下押し圧力がかかる可能性がある。
一方でタンカー保険料がすぐに下がるかは別問題だ。保険会社は政府系機関の「通れる」という言葉よりも、実際に無事故で通過した件数の積み上げを見て判断する傾向がある。市場への波及は段階的なものになりそうだ。
この先どうなる
最大の不確定要素は、イランとの交渉がどう転ぶかだ。JMICの指針は状況の変化に応じて随時更新されうるもので、今回の表明が恒久的なルール変更でないことは明らかだった。米国とイランの間で何らかの合意が崩れれば、昨夜までの指針が翌朝には無効になっている、という事態も十分ありえる。ホルムズ海峡南航路をめぐる情報は、今後も目が離せない状態が続くんじゃないかと思う。