H5N1鳥インフルエンザが、最後の「空白地帯」だったオーストラリアにとうとう到達した。オーストラリア農業省が現地時間の土曜日、西オーストラリア州・ケープ・ル・グランド国立公園の海岸で発見されたブラウン・スカア(褐色のカモメ類の渡り鳥)からH5N1の陽性反応を確認したと発表した。南極を含む全7大陸への到達が確定した瞬間で、地球上にウイルスが届かない大陸はもうない。

パースから700km離れた辺境で何が起きたか

発見場所はパース南東約700キロ、エスペランス近郊のビーチ。渡り鳥がひっそりと倒れていた、という話だ。農業相ジュリー・コリンズは会見で「永久に鳥インフル・フリーでいられないとはわかっていた」と述べた。想定内、ではあったらしい。

「We all knew we couldn't be bird flu-free forever」― Julie Collins, Australian Agriculture Minister

会見では2例目の疑い例——南部のウミツバメ(サザン・ペトレル)が同じエスペランスのビーチで衰弱状態で見つかっていることも明かされた。コリンズ相は「現時点では大量死の証拠はない」と強調したが、当局はすでに緊急動物疾病委員会を召集している。首席獣医官のベス・クックソンによれば、「この事態への準備は長期間にわたって行ってきた」とのことで、水面下での備えは相当あった模様だ。

オーストラリア固有種への影響が読めない

ヒトへの感染リスクが低いとされる一方で、今回のケースで真剣に考えるべきなのは渡り鳥による拡散ルートと、オーストラリア固有の生態系への影響だろう。ブラウン・スカアは南極を含む南半球広域を回遊する。感染した個体がどこを経由して西オーストラリアに辿り着いたかを追えば、ウイルスの移動スピードと経路が見えてくるはずで、当局の調査はそこに集中している。

H5N1は2021年以降、欧州・北米・南米・アフリカ・アジアで野鳥や家禽に壊滅的な被害をもたらしてきた。オーストラリアには世界的に見ても希少な固有種が密集しており、ニワトリやアヒルといった家禽だけでなく、ペンギン・信天翁・海鳥など外来ウイルスへの免疫経験がほとんどない種が多い。脅威に対する「耐性のなさ」という点では、南極の野鳥が大量死したパターンと重なる部分がある。絶滅危惧種指定の担当官フィオナ・フレイザーは「数日以内に他の動物集団での感染の有無が判明する」と述べており、次のデータが出るまでは評価が固まらない段階だ。

この先どうなる

オーストラリア当局は渡り鳥の移動モニタリングと家禽農家への警戒態勢強化を軸に動き始めている。観光客に人気のケープ・ル・グランド国立公園では野鳥への接触を避けるよう注意が呼びかけられており、海岸での死骸発見時は当局への通報が求められている。一方、H5N1の世界規模での拡散を受けてWHOや各国は引き続きヒトへの変異リスクを監視中で、現在のウイルス株が「ヒト間感染しやすい形」に変異するかどうかが最大の焦点であり続ける。オーストラリアへの上陸確認で、その監視網がまた一段、厳しくなるのは間違いない。