イスラエル・ヒズボラ停戦が発効してから数時間も経たないうちに、レバノン南部ナバティエ市では少なくとも12回の空爆が確認された。死者はすでに47人。「停戦合意」という言葉と地上で起きていることの落差が、あまりにも大きすぎる。

停戦発効から12発、ナバティエ空爆の一夜

現地時間16時(GMT13時)に停戦が発効したとされた直後のことだった。ナバティエ市の救助当局がBBCに語った内容はこうだ。

「停戦が始まった16時以降、少なくとも12回の空爆があった」

イスラエル軍は停戦の発効を認めつつも、軍報道官はその後すぐに「直接的脅威の除去を継続する」と言明した。つまり、手は止めないということらしい。ヒズボラ側もイスラエル兵4人を殺害しており、どちらも引かない構図が続いている。

ヒズボラのカセム書記長は「ヒズボラを消滅させる計画は失敗した」と宣言したが、公式の停戦確認声明はまだ出していない。双方がそれぞれの論理で動いている状態で、合意の枠組みだけが宙に浮いている格好だ。

トランプ中東合意の覚書に「レバノン停戦」を明記していたのに

今回の停戦はトランプが主導した米イラン核合意の覚書にも盛り込まれていた。レバノン停戦はその一部として位置づけられていたわけで、ホワイトハウスは「停戦は有効だ」と主張し続けている。

ただ、イランの見方は違う。テヘランはすでに「トランプはイスラエルを制御できていない」と非難する声明を出している。さらに言えば、トランプ自身もネタニヤフ首相が「無意味に民間人を殺している」と異例の批判を公言しており、同盟国に対してここまで踏み込んだ言葉を使うのは異例中の異例だ。

ナバティエ空爆が続く現実は、トランプ仲介の枠組みがどれだけ地上に影響力を持てるかという問いをそのまま突きつけている。

この先どうなる

最大の焦点は、イスラエルが「直接的脅威の除去」を名目にした軍事行動をどこまで続けるか、それをアメリカが止められるかどうかだろう。ホワイトハウスは停戦を「有効」と言い張るしかなく、イスラエルは独自の論理で動く。ヒズボラはまだ公式に停戦を認めていない。三者の思惑がバラバラのまま翌朝を迎えた今、合意が形だけのものになる可能性はかなり高い。イランとの核合意との連動も考えれば、次の火種は思わぬところで点火するかもしれない。