NATO3.0という名の通牒が、ブリュッセルで静かに叩きつけられた。米国防長官ピート・ヘグセスは5月のNATO国防相会議で、欧州駐留米軍の6カ月間にわたる包括審査を正式に宣言。「落第する国もあれば、優秀な成績を収める国もある」と言い切り、同盟の空気を一変させた。
GDP5%、3.5%——ヘグセスが欧州に突きつけた数字
審査の基準として米国が提示したのは、GDPの5%を防衛関連支出に充てること。そのうち実弾の防衛費として3.5%、残る1.5%はインフラ等の関連費用という内訳だった。現在のNATO目標は2%であることを考えると、その要求水準は倍以上。ヘグセスはこの目標を達成できない国々を「フリーライダー(タダ乗り)」と名指しした。
「この審査で落第する国もあれば、優秀な成績を収める国もある」——ピート・ヘグセス米国防長官(BBC報道より)
NATO事務総長マーク・ルッテはすぐさま反論に出た。欧州全体の防衛支出は昨年比で約20%増、900億ユーロ規模の拡大がすでに起きている、と。ただ米国側が撤退・削減の具体的規模を明かしていないため、議論の前提がかみ合っていない場面もあったらしい。「何も事前に決まっていない」とする米国高官の発言が、かえって不透明感を強めた。
日本も無関係ではない——条件付き同盟という新モデル
今回の動きで注目すべきは、欧州だけの話で終わらない点だ。ヘグセス欧州審査が示したのは、米国の同盟管理モデルが「無条件の安全保障提供」から「負担共有の実績に基づく条件付き関与」へとシフトしつつあるという現実だった。
在日米軍や在韓米軍を抱えるアジアでも、同様の審査ロジックが適用されない保証はどこにもない。NATO防衛費GDP5%という数字が欧州に向けられた要求だとしても、日本のGDP比防衛費はいまだ2%到達が目標ラインにある。米国が「成果で測る同盟」という基準を持ち込み始めたなら、日本にとってもこれは他人事ではないってことになる。
この先どうなる
6カ月間の審査期間が終わる頃、欧州の安全保障地図はどう変わっているか。審査結果の公表基準も、撤退の定義も、まだ何も確定していない。ルッテ事務総長が「欧州はすでに動いている」と強調する一方、米国が求めるスピードと欧州の予算編成サイクルには根本的なズレがある。NATO3.0の6カ月後、「落第国」のリストが実際に公表されるかどうか——そこが最初の分岐点になりそうだ。日本を含むアジアの同盟国にとっても、その結果は自国の防衛費議論と直結して読まれることになるだろう。