トランプ イラン交渉が突然、険しい局面を迎えた。5月22日、トランプ前大統領はTruth Socialに数行の投稿を残し、「彼らは終わった」と断言してみせた。外交文書でも声明でもなく、SNSの一言。それが原油市場を即座に動かした、というのが今回の話だ。
「彼らは終わった」――投稿の全文が語ること
トランプが書き込んだのは、こんな言葉だった。
「我々は必死で会ったわけではない。イランがそうだったのだ。彼らは終わった!我々はこれを成り行きに任せる」
読んで引っかかったのは語尾の「Well play out(成り行きに任せる)」という部分。完全決裂なら「終わり」の一言で締めるはずが、あえて「成り行き」を残している。これは交渉の扉を細く開けたままにしているのか、それとも圧力をかけ直すための言葉遊びなのか、現時点では判断が難しい。
注意しておきたいのは、これが米政府の公式声明ではないという点。国務省も国家安全保障会議も、同じタイミングでの確認文書は出ていない。トランプ個人のSNS投稿が、なぜここまで市場と外交関係者を動かすのか。それ自体がトランプ政治の特徴でもあるし、リスクでもある。
ホルムズ海峡が揺れると、世界の原油価格が揺れる理由
タイミングが絶妙だった。ホルムズ海峡をめぐる緊張はここ数週間で静かに積み上がっていて、直近では「原油4.7%急落・ホルムズ再開合意」が報じられたばかりだった。そこにトランプの「イランは終わった」が重なった形になる。
世界の原油輸送量のおよそ20〜25%がホルムズ海峡を通過するとされていて、ここが不安定になると原油価格の不確実性が一気に上がる。市場参加者がこの投稿に敏感に反応したのは、数字的な根拠がある話だった。スイスでの署名式で一度落ち着いたはずの空気が、再び霧がかってきた、という印象に近い。
イラン側は今のところ公式な反応を出していない。ただ、「必死に会いに来たのはイランの方だった」というトランプの言い方は、交渉の主導権が米側にあると印象づけるための語りロだとも読める。実際の交渉テーブルで何が起きていたのかは、依然として外側からは見えていない。
この先どうなる
「成り行きに任せる」という結語が残っている以上、完全な扉の閉鎖とは言い切れない。トランプ外交のパターンを振り返ると、強い言葉で相手を揺さぶり、次の交渉ラウンドに引き込むという手順が少なくない。イランがこれに乗るかどうかは、国内の政治圧力とも絡んでいて、単純ではない。
ホルムズ海峡の緊張が再び高まるシナリオと、水面下で交渉が続くシナリオ、両方がまだテーブルの上にある。原油市場は当面、このTruth Social発言を手がかりに値動きを繰り返すことになりそうだ。次の手を指すのがトランプなのかイランなのか、そこだけ注視しておくのが今は正解に近いかもしれない。
