アジア株式市場が史上最高値を更新した。きっかけはホルムズ海峡の再開合意——ただ、市場が反応したのは「平和になったから買い」という単純な話じゃなかった。
原油価格の週間下落が解放した「二重の買い材料」
ホルムズ海峡の再開合意を受け、原油価格は週間ベースで下落に転じた。これが効いたのは2つのルートからだった。
ひとつは直接的なインフレ圧力の低下。エネルギーコストが落ち着けば、食品・物流・製造の川下コストにも波及する。もうひとつが金融政策への期待で、アジア各国の中央銀行にとっては利下げ余地が広がる計算になる。
さらに見落としがちなのが「戦争リスクの解除」という要因だ。市場はすでにホルムズ封鎖リスクをある程度株価に織り込んでいた。そのリスクプレミアムが剥がれた分だけ、株価の押し上げ効果が二重にかかる——そういう構造だったらしい。
「ホルムズ海峡の再開が原油供給を回復させインフレ圧力を抑制するとの楽観論がリスク選好を押し上げ、アジア株式市場が史上最高値に達した」(Bloomberg)
世界同時にリスクオンが点火した格好で、資金の動きはアジア全域に及んでいる。
「史上最高値」の足元にある、もう一つの顔
ここで引っかかったのが、Bloombergが同時に伝えた留保の部分だ。
ホルムズ合意は「署名された」ではなく「合意された」の段階。定着が確認されるまで、市場の高揚感は脆い均衡の上にある——という指摘は、数字の華やかさとは対照的に静かに重い。
ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約2割が通過する要衝。再閉鎖リスクが残るうちは、今回の株高を「恒久的な環境変化」とは言い切れない。アジア株式市場の最高値更新がニュースになる一方で、市場参加者の一部がヘッジを外しきれていない理由はそこにある。
この先どうなる
焦点は2つに絞られる。ホルムズ合意が実際に定着するか、そして原油価格の週間下落トレンドが続くかどうかだ。
合意が維持されれば、アジア各国の中央銀行が利下げに踏み切るシナリオが現実味を帯びてくる。金融緩和とコスト低下が重なれば、株価の水準はさらに切り上がる余地がある。
逆に、合意が揺らいだ瞬間——原油価格が反転した瞬間——に、今の高揚感がどれだけ急速に剥落するかも同時に問われることになる。史上最高値という数字は、今のところ「期待の前払い」に近い。回収できるかどうかは、海峡の向こう側次第だ。
