米イラン覚書署名は、フランス・エヴィアン=レ=バンのG7会場で静かに完了した。全14項目にわたる覚書(MOU)にトランプ大統領が正式署名したことを、ホワイトハウス当局者がBBCに確認している。4か月前に火を噴いた米・イラン・イスラエルを巻き込む軍事衝突が、一枚の文書で「永続的終結」に向けて動き始めたことになる。

14項目の中身——核放棄・ホルムズ・3000億ドルの三点セット

覚書の第1項が規定するのは「全戦線における即時かつ永続的な軍事作戦の終結」。レバノンも対象に含まれており、トランプ政権がイスラエルのヒズボラへの攻撃継続を警戒していたことが背景にあるらしい。

核問題については「イランは核兵器を永久に保有しない」と明記された。これは既存のNPT体制よりも踏み込んだ表現で、イランが自ら文書に署名した点は注目に値する。

復興資金については、3000億ドル規模の基金設立が盛り込まれた。ただし——ここが引っかかったのだが——米国の拠出は義務付けられていない

「14項目からなる覚書は、イランが核兵器を永久に保有しないことを明記し、同国の『復興と経済発展』のために3000億ドル規模の基金を設立することを約束している――ただし米国の拠出義務はない。」(BBC News)

つまり「3000億ドル」という数字は約束ではなく枠組みで、誰が実際に出すのかは今後60日間の追加交渉に委ねられている。

ホルムズ海峡再開は「イランが守れば」の条件付き

世界の原油輸送の約2割が通るホルムズ海峡の再開は、今回の合意の最大の経済効果として報じられている。しかしこの合意はトランプ政権が「パフォーマンス・ベース(履行ベース)」と位置づけており、イランが条件を守った場合にのみ経済的恩恵が得られる仕組みだ。

ホルムズ再開による原油価格への影響はすでに市場が反応を始めており、直近では原油が4%超の下落を記録したという動きもある。ただし合意文書には多くの未解決事項が残されており、今後60日間の交渉次第で状況が大きく変わる可能性もある。楽観視するには早すぎる段階だろう。

この先どうなる

両国は今後60日間で詳細条件の交渉を継続する。焦点は3000億ドル基金の資金拠出国の確定、イランの核施設への査察体制、そしてレバノンでのイスラエルとヒズボラの停戦維持の3点になりそうだ。覚書は「枠組みの合意」に過ぎず、核査察の具体的な検証手段はまだ文書化されていない。イランが履行条件を満たさなければ恩恵はゼロ——そういう設計になっている以上、次の60日が実質的な本番と見ていい。