ホルムズ海峡を流れる石油の30%が、戦争が終わっても戻ってこないかもしれない。ゴールドマン・サックスがそんな試算を公表し、エネルギー市場に波紋を広げている。

ゴールドマンが弾いた「70%」という数字の重み

ブルームバーグが報じたところによると、ゴールドマン・サックスはイランとの戦争が終結したとしても、ホルムズ海峡を通過する石油流量は戦前比で最大70%程度にしか回復しない可能性があると分析している。言い換えれば、残りの30%は恒久的に失われるリスクがある、ということだ。

Goldman Says Hormuz Oil Flows May Recover to Only 70% After War(ゴールドマン・サックス、戦争後もホルムズ海峡の石油流通量は70%にしか回復しない可能性と指摘)— Bloomberg, 2026年6月18日

ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約20%が通過する、いわば「世界のエネルギーの首根っこ」に当たるルートだ。ここが一時的に閉まるだけでも原油価格は跳ね上がるのに、その30%が半永久的に消えるとなれば、話のスケールが違ってくる。

日本・韓国・インドが直面する「調達の穴」

影響が特に深刻になるのは、中東からの原油依存度が高いアジア諸国だろう。日本はその典型で、原油輸入の約9割が中東依存とされてきた。ゴールドマンの試算が示唆するのは、単なる価格高騰ではなく、調達ルートそのものの再設計を迫られる事態だ。

代替ルートの整備には時間もコストもかかる。タンカーの迂回航路を確保するにしても、新たなパイプラインを敷設するにしても、ゴールドマン・サックス原油予測が示す「恒久的喪失」シナリオが現実になれば、エネルギーコストの高止まりは10年単位の問題になりうる。各国政府が再生可能エネルギーへの転換を急ぐ中、その移行コストに中東リスクの上乗せが重なる格好だ。

調べてみると、直近では「ホルムズ再開合意」との報道で原油が4.7%急落する場面もあった。市場は和解への期待と紛争長期化の恐怖の間を激しく揺れていて、ゴールドマンの試算はその「希望的観測」に冷や水を浴びせた格好でもある。

この先どうなる

中東エネルギー安全保障をめぐる議論は、ここから加速していくとみられる。日本・韓国・インドなどは備蓄の積み増しや調達先分散の圧力が一段と高まる。原油価格は短期的な停戦合意で下がっても、中長期のリスクプレミアムは簡単には剥がれないだろう。ゴールドマンの「70%」という数字が、各国のエネルギー政策の前提として織り込まれていく——そんな未来が近づいているのかもしれない。