エボラ出血熱が猛威を振るうコンゴ民主共和国で、ウイルスよりも早く広がっているものがある——医療への憎悪だ。2025年、東部の都市ブテンボにあるワナマヒカ病院に、ナイフを持った武装した男たちが乱入した。標的にされたのは、エボラに感染して治療を受けていた6歳の女児とその母親。2人はそのまま強制連行され、現在も行方がわかっていない。

ブテンボ病院襲撃——「非常に激昂した男たち」が何をしたか

地元保健当局のルバンボ・マボコ・ガストン医師が声明を出した。病院に侵入してきた男たちは「非常に激昂した状態」で、ナイフを手にしていたという。女児との関係は明らかになっていないが、エボラ治療施設に対する疑念と恐怖が地域全体に広がっていることは、すでに複数の事件から見えていた。

「子どもとその母親が健康状態を悪化させるリスクを抱えており、親族に感染を広げる可能性もある。今すぐ医療機関に来てほしい」——ガストン医師(ロイター通信とのインタビューより)

治療を受けている最中に連れ去られた2人。エボラ感染者が適切な隔離外に出れば、接触した家族や地域住民に連鎖感染が起きうる。ガストン医師の言葉が焦りではなく、純粋な医学的警告として響いてくるのはそのためだ。

840件・死者200人——数字の裏で繰り返される医療施設への暴力

今回の流行では、感染確認件数840件超、死者は約200人に達している。ブテンボ 病院襲撃はこれが初めてではない。先月、モンブワル町では怒った群衆が施設で亡くなった遺体を取り戻そうとし、警察が威嚇射撃を行った。その数日前には、同じく東部のルワンパラで隔離テントが放火されていた。エボラで亡くなった人の遺体は感染力が非常に高く、伝統的な弔いの方法がウイルス拡散につながることが多い。それを制止しようとする医療スタッフと、遺体を「奪われた」と感じる遺族——この構図が繰り返し衝突を生んでいる。

エボラ 医療施設 暴力という問題は、治安の悪さだけでは説明できない。「病院に連れて行かれたら戻ってこない」という認識が、地域社会に根を張ってしまっているらしい。感染者の家族にとって、隔離は「引き離し」に映る。その恐怖が、今回のような強行手段に走らせる。数字が積み上がるほど、住民の不信も積み上がっていく——という悪循環だった。

この先どうなる

連れ去られた6歳の女児と母親の発見が最優先課題だが、仮に見つかったとしても強制的に連れ戻すことは難しい。ガストン医師が「来てほしい」と呼びかける形を選んだのも、そのあたりの現実を見越しているんじゃないかと思う。エボラ出血熱 コンゴ民主共和国の流行が続く中、WHO や国際支援機関は医療施設の安全確保と地域コミュニティへの信頼構築を同時に進める必要に迫られている。武装警備を強化すれば、住民との対立はさらに深まる。だからといって無防備では、医療スタッフも患者も守れない。この板挟みの中で、ブテンボの今夜も更けていく。