ホルムズ海峡封鎖解除へ向けた米イラン枠組み合意が伝わり、ブレント原油が1バレル83.24ドルへ4.7%急落した。世界の石油・LNG供給量の約20%が通過するこの航路が約4カ月ぶりに動き出そうとしている——それだけで市場が動くには十分だった。
原油4.7%急落、空爆前の水準まであと一歩
2月28日、米・イスラエルがイランへの空爆を開始した直後、テヘランはホルムズ海峡を通過する船舶への攻撃を宣言。世界有数のエネルギー回廊は事実上の封鎖状態に入った。
その後のブレント原油は乱高下を繰り返し、紛争開始前の約70ドルから高値圏に張り付いたまま推移していた。今回の急落でその上乗せ分がかなり剥がれた格好だ。アジアと欧州の株式市場も一斉に上昇しており、エネルギーコスト圧力の緩和をひとまず歓迎したようにみえる。
仲介役を担ったパキスタンによれば、正式な署名式は6月19日にスイスで実施される。イランのガリババディ外務副大臣は国営テレビの電話インタビューで合意の成立を認め、トランプ大統領はSNSに短くこう投稿した。
「石油を流せ!」——ドナルド・トランプ米大統領、SNS投稿より
トランプらしい一言ではあるが、市場が落ち着くかどうかは別の話だった。
「合意の中身が見えない」——バンダ・インサイツの警告
エネルギー市場分析会社バンダ・インサイツのバンダナ・ハリ氏は、今回の合意について踏み込んだ懸念を示した。公開されている情報では合意内容の詳細が不明で、米イラン枠組み合意が実際に何を約束しているのかが見えない——それ自体が「市場に不安と不確実性をもたらす可能性が高い」と指摘している。
署名式は来週末。それまでの1週間、原油市場が再び激しく揺れる局面も十分ありうるらしい。4.7%の急落は朗報として受け取られたが、速報ベースの反応と、実態が確認されてからの反応は往々にして逆向きになる。今回もそのパターンを警戒しておく必要がある。
この先どうなる
6月19日のスイス署名式を経て合意内容が公開されれば、原油市場の方向性はある程度はっきりしてくるだろう。ただ、ホルムズ海峡封鎖解除が実際の航行再開につながるまでには、イラン国内の強硬派の出方や、米国による制裁緩和の範囲といった変数が残る。
市場が最も恐れているのは「合意したのに動かない」シナリオ。逆に合意が完全に履行されれば、空爆前の70ドル水準への回帰もあり得る話で、エネルギー輸入依存度の高い日本にとっては見逃せない一週間になりそうだ。