マクロン議会解散の報が届いたのは、欧州議会選挙の開票速報が流れたその夜だった。得票率は国民連合が約31%、マクロン陣営が約14%——ほぼダブルスコアの惨敗を受けて、現職大統領は自ら政治の賭け板をひっくり返した。フランス第五共和制の歴史を振り返っても、これほど大胆なタイミングの議会解散はそうそうない。
ル・ペン率いる国民連合、なぜ31%を取れたのか
国民連合(RN)が票を伸ばした背景には、物価高と移民問題への根強い不満がある。マクロン政権が進めた年金改革も傷痕を残していた。改革の恩恵が届いていないと感じる層が、抗議票として国民連合に流れたらしい。
ル・ペン自身は今回の欧州議会選を「政権交代への踏み台」と位置づけていたとされる。欧州議会では直接の行政権を持たないが、国内世論への影響力は絶大——その読みが今回、見事に当たった格好だ。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は日曜日、マリーヌ・ル・ペン率いる極右政党「国民連合」に欧州議会選挙で壊滅的な敗北を喫した後、議会を解散し、電撃的な国民議会選挙の実施を宣言した。(AP通信)
調べていて引っかかったのが、マクロンが「なぜあえて解散を選んだか」という点だ。このまま任期を続けても国民連合の勢いを抑えられない——そう判断したとすれば、早期決戦で勝負を仕切り直す一手は理解できる。ただ、負ければその損失はマクロン個人の政治生命をはるかに超える。
コアビタシオンが発動すると何が変わるか
仮に国民連合が国民議会で過半数を獲得すれば、コアビタシオン——大統領と首相が異なる政治勢力となる保革共存政権——が発動する。フランスで過去に3回起きた現象だが、今回は文脈がまるで違う。
マクロンはウクライナへの地上部隊派遣の可能性に言及するなど、NATO域内で最も踏み込んだ姿勢をとってきた指導者の一人だった。国民連合はロシアへの融和的なスタンスで知られ、ウクライナ支援の縮小を主張している。コアビタシオン下では外交・防衛の実権が首相側に移る部分も出てくる。EU最大の核保有国フランスの安全保障政策が揺れれば、欧州全体の計算が狂いかねない。
欧州統合を主導してきたフランスとドイツの「EU双発エンジン」論が語られて久しいが、その一翼が内向きに傾くインパクトは小さくない。
この先どうなる
国民議会選挙は二回投票制のため、第一回投票と第二回投票の間の連立交渉が勝敗を左右する。左派連合・中道・右派がどう組み合わさるかで、国民連合が絶対多数をとれるかどうかが変わってくる。マクロン陣営がここで中道左派との協力関係を構築できれば、議会過半数を阻める可能性も残る。ただ、フランス国内の空気は「変化」を求める方向に振れていて、それを一度の選挙で覆すのは容易じゃない。ウクライナ情勢が続く中、欧州のパワーバランスは今夏のフランス投票箱がひとつの答えを出す。