聖ウスペンスキー大聖堂の屋根が炎に包まれた映像が出回ったのは、月曜の夜明け前だった。ロシアがウクライナに向けてミサイル70発とドローン611機を一斉投下。キーウで4人、ハルキウでは消火活動中の救助隊員5人が死亡し、死者は計11人、負傷者は全土で53人に達したとゼレンスキー大統領が明らかにした。

11世紀の聖堂に大穴——キーウ・ペチェルスク大修道院への直撃

今回の攻撃でひときわ目を引いたのが、キーウ・ペチェルスク大修道院に建つ聖ウスペンスキー大聖堂への被害だ。11世紀に建造されたこの聖堂はユネスコ世界遺産の一部で、ウクライナの人々にとって宗教的・文化的なシンボルとも言える存在。側壁には大きな穴が開き、屋根は部分的に崩落した。

「11世紀建造の聖ウスペンスキー大聖堂が甚大な被害を受けた。ゼレンスキー大統領はこれを『キリスト教文化に対する今日最大のロシアの犯罪の一つ』と呼んだ。」(BBC News)

ロシア側は聖堂への攻撃を否定しているが、映像には炎上する屋根と崩れた外壁がはっきり映っていた。ゼレンスキーは消火完了を確認後も怒りを緩めず、国際社会へ連帯を呼びかけた。フランスのマクロン大統領も即座に非難声明を出し、欧米各国の反応は予想より早かった。

14万人が停電、救助隊員5人が殉職したハルキウの夜

キーウだけじゃない。北東部ハルキウではドローン攻撃で起きた火災に駆けつけた消防・救助隊員5人が、二次攻撃とも見られる爆発に巻き込まれて死亡した。市民を助けようとした人間が狙われた格好で、現場の映像は世界に拡散された。

キーウでは住宅街の複数棟が直撃を受け、少なくとも23人が負傷。市長のクリチコは14万人以上が停電したと発表した。ウクライナ空爆2025としてはここ数カ月で最大級の規模らしく、ほぼ全土に空襲警報が発令された朝だった。

一方、ロシア側でも被害があった。ウクライナのドローンがロシア・トゥーラ市を攻撃し、1歳の子どもを含む3人が死亡、3人が負傷したと現地当局が発表。双方の攻撃が交錯する夜だったことがわかる。

この先どうなる

聖ウスペンスキー大聖堂への被害は、軍事的損害を超えた問題として欧米各国の世論を動かす可能性がある。ユネスコ世界遺産の破壊は国際人道法上でも問題視されやすく、ロシアへの追加制裁論議が再燃するかもしれない。ゼレンスキーはすでに各国首脳への働きかけを強めているとみられ、次の国際会議での議題に浮上する公算は高い。ただ、ロシアが攻撃を否定している以上、責任の帰属をめぐる議論は長引くだろう。修復に向けたユネスコの対応と、欧米の制裁論がどこまで連動するか——そこが当面の焦点になりそうだ。