ワールドカップの麻疹感染リスクについて、ジョンズ・ホプキンス大学感染症センターが開幕と同時に異例の警告を出した。何百万人もの観客が詰め込まれるスタジアムは、ウイルスにとってこれ以上ない拡散装置になり得る——そう専門家たちが声を揃えている。Bloombergが報じた内容を追ううちに、「これは毎回起きている話だ」という既視感が頭をよぎった。
感染率90%超——麻疹が「帰国便」に乗る仕組み
麻疹は飛沫ではなく空気感染する。同じ空間にいるだけで、ワクチン未接種者への感染率は90%を超えるとされており、インフルエンザとはケタが違うレベルの感染力を持つ。スタジアムの密集度、そこに集まる各国からの観客——接種歴がばらばらの数万人が数時間同じ空気を吸う、という状況は、感染症の教科書に出てくる「最悪ケース」に近い。
問題はスタジアムの中だけじゃない。試合が終われば、観客は帰国便に乗って世界中に散らばる。潜伏期間中のキャリアが国境を越えて移動する構図は、ジョンズ・ホプキンス 感染症警告が繰り返し指摘してきたパターンでもある。
「FIFAワールドカップは、何百万人もの人々が超満員のスタジアムに集まることで、病原体にとって『温床となる環境』を生み出すと予測されており、エボラ、デング熱、麻疹などの感染症拡大への懸念が高まっている」(Bloomberg)
麻疹だけではない。デング熱やエボラウイルスも俎上に上がっているのは、それぞれ異なる感染ルートを持つからだ。蚊が媒介するデング熱は開催地の気候次第でリスクが跳ね上がり、エボラは死亡率が極めて高い。三つが同時に警告対象になっているというのは、さすがに重い話だと感じた。
2014年の「前例」が証明していること
実は、スタジアム アウトブレイク リスクが現実のものになった前例はある。2014年ブラジルW杯の後、開催地周辺でデング熱が拡散し、帰国した観戦者を通じて各国にウイルスが持ち込まれた事例が記録されている。あのときは「運が良かった」と言えるかもしれないが、今回の規模と参加国数を考えると、同じ楽観は通じないだろう。
公衆衛生の専門家たちが求めているのは、接種歴の確認義務化と入場前スクリーニングの導入だ。ただ、これを国際的なスポーツイベントに全面導入するのは現実的にかなり難しく、「求めてはいるが実現するかは別の話」というのが正直なところらしい。
この先どうなる
今後の焦点は二つ。一つは、各国政府と開催国がジョンズ・ホプキンス 感染症警告を受けて実際に何かアクションを取るかどうか。もう一つは、大会期間中に麻疹や他の感染症の集積事例が確認されるかどうか。W杯が終わってから「やっぱり」という話が出てくるパターンは、過去にも繰り返されてきた。今回ばかりは、備えの話が終わってから感染の話が始まらないことを願うしかないが——正直、楽観はしにくい状況だと思う。