米イラン核合意が「日曜に署名される」と思っていたら、イランが「そんな話は聞いていない」と言い出した。トランプ大統領が今週の署名を宣言した直後、イラン外務省当局者がニューヨーク・タイムズの取材に対し明確に否定。たった1日のズレが、原油市場から交渉の裏側まで、いくつもの疑問符を連れてきた。

イラン外務省が否定した「日曜署名」、原油はすでに動いていた

市場はトランプ発言を額面通りに受け取った。和平合意への期待が先行し、原油価格は急落。ところが同じタイミングで、イラン側当局者はこう述べていた。

「日曜日の署名式に関する計画は存在せず、合意は今後数日以内に署名される可能性がある」

「数日以内」という言葉は曖昧に見えて、実は重い。もし署名が日曜ではなく来週以降にずれ込めば、原油の急落分が巻き戻される可能性がある。先に動いた投資家ほど、損失を抱えるリスクを負うことになる。

トランプ中東和平交渉、タイムライン食い違いの背景にあるもの

調べていて引っかかったのは、このズレが「単なる認識の差」で済むのかという点だった。核開発の凍結範囲、ウラン濃縮の上限、制裁解除のスケジュール——これらを盛り込む最終合意文書の詰めが終わっていないなら、署名日がずれるのは当然の帰結ともいえる。

イラン外務省がわざわざニューヨーク・タイムズに「期待を抑制」するコメントを出した、という事実が気になる。公式の否定ではなく、あくまで「当局者」レベルの発言。これはイラン内部で署名への温度差があることを示唆しているのか、それとも最終局面で交渉カードを残そうとしているのか。2015年のJCPOA合意も、最終週に何度かタイムラインが揺れた経緯がある。

トランプ中東和平交渉は、宣言と現実の間に常にギャップを抱えてきた。今回もそのパターンが繰り返されているとすれば、「署名まであと数日」という言葉を、そのまま信じない方がいいかもしれない。

この先どうなる

最も現実的なシナリオは、今週末から来週初めにかけて署名が行われるというもの。ただし、イラン外務省が「数日以内」と言い切ったことで、合意文書の骨格自体は固まりつつあるとも読める。焦点は「いつ」より「何が書いてあるか」に移っている。核開発の凍結水準や制裁解除の条件が予想より甘ければ、イスラエルや湾岸諸国から強い反発が出る可能性も残る。原油市場は署名の日程よりも、合意内容の一報を待っている状態といえそうだ。