マクロン解散総選挙――その言葉が飛び出したのは、欧州議会選挙の開票結果が出た当日の夜だった。得票率14.5%対31%。自分の倍以上の票をルペン率いる国民連合(RN)に持っていかれたマクロンが選んだのは、沈黙でも謝罪でもなく、国民議会の即時解散という一手だった。「賭けに出た」と言えば聞こえはいいが、これは追い詰められた者の決断に見えた。
RNが「31%」を取った夜に何が起きたか
欧州議会選挙2024の結果は、数字だけ見ても衝撃的だった。国民連合RN極右は全国で約31%を獲得し、マクロンの与党連合(約14.5%)を文字通り倍以上の差で叩きのめした。フランス国内での欧州議会選としては、記録的な極右票の集中だったらしい。
調べていて引っかかったのは、この選挙結果が「反EUの民意」というより「反マクロンの受け皿」として機能した側面だ。物価高、年金改革への反発、移民問題——くすぶり続けた不満がRNへの投票という形で一気に噴き出した格好になった。
「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は日曜日、欧州議会選挙でマリーヌ・ルペン率いる極右・国民連合(RN)に大敗を喫した後、議会の解散・総選挙を宣言した。」(Financial Times)
マクロンの読みはこうだったんじゃないか——総選挙に打って出ることで、有権者に「本当にRNに政権を任せるのか」を問い直す。欧州議会選の抗議票と、実際の国内権力を握らせる一票は違う、と。ただ複数の欧州メディアは、この賭けが極右台頭にむしろ正統性を与える起爆剤になりかねないと報じている。
「コアビタシオン」が現実になるとき、EUは揺れる
総選挙でRNが下院第一党を獲得した場合、フランスは「コアビタシオン(同居政府)」と呼ばれる状態に入る。大統領はマクロン、首相はRN側——という権力の同居だ。1980〜90年代に複数回経験しているとはいえ、今この時期に起きれば影響は国内にとどまらない。
ウクライナへの軍事支援継続、EUの財政規律へのコミットメント、NATOとの連携。これらはすべて首相府が動かす政策領域と重なっている。RN寄りの政権ができれば、フランスの対外姿勢が根本から変わりうる。「欧州の守護者」を自任してきたマクロンが仕掛けた解散が、そのマクロン路線を葬る引き金になるとしたら、皮肉としかいいようがない。
この先どうなる
6月末の総選挙に向け、焦点はRNが単独過半数を取れるかどうかになる。欧州議会選の勢いを考えれば楽観できないが、フランスの小選挙区制は二回投票制をとっており、第一回投票で過半数が決まらない選挙区では「反RN票の結集」が起きやすい構造でもある。左派連合や中道勢力がどこまで候補者を一本化できるか——そこが焦点になりそうだ。マクロンの賭けが「英断」になるか「失策」になるかは、フランスの有権者が6月末に出す答え次第。それまで目が離せない。