Fed金利据え置きの決定が下された今週、もう一つの事実が重なった。イランとの戦争が始まってちょうど100日目だった。米連邦準備制度(Fed)とイングランド銀行(BOE)は相次いで政策金利の据え置きを決定。Bloombergが報じた。利上げでも利下げでもない「静止」という選択の裏に、答えの出ない問いが張りついている。
インフレと不況、どちらが先に牙を剥くか
戦時下の経済が抱える矛盾はシンプルで残酷だ。ホルムズ海峡周辺の緊張でエネルギー価格は高止まりし、物価を押し上げている。一方で戦争の長期化への不安が消費者と企業の財布を閉じさせ、景気の足を引っ張っている。インフレ対策として利上げすれば、冷え込んだ需要にさらに追い打ちをかける。景気支援のために利下げすれば、すでに高い物価に火をつける。どちらに動いても傷つく——それが今の中央銀行の立ち位置らしい。
「複数の主要中央銀行にとって、イラン戦争がインフレと景気後退のどちらにより深刻なリスクをもたらすかという問いは、来週も引き続き未解決のまま残る見込みだ」(Bloomberg)
この「未解決」という言葉が重い。通常、中央銀行は不確実性があっても判断を下す機関だ。それが公式に「答えが出ない」と認めているわけで、状況の特殊さが透けて見える。
Fedが1970年代に犯したミスと、今回の不気味な既視感
スタグフレーションという言葉が再び市場でささやかれ始めている。1970年代のオイルショック後、Fedは判断を誤り続けた。インフレが落ち着いたと見て緩和し、物価が再燃するたびに慌てて引き締める——その繰り返しがスタグフレーションを深刻化させた。今回の構図は当時と重なる部分が少なくない。エネルギー供給の不安定さ、地政学リスクの長期化、消費者心理の悪化。当時と違うのはグローバル化した金融市場の複雑さで、それが判断をさらに難しくしているんじゃないかとも思える。BOEがイラン戦争の影響をどう織り込むかという問題は、英国固有のエネルギー依存度とも絡んでいて、Fedとも微妙にズレがある。両行が同じタイミングで「静止」を選んだのは偶然ではなく、共通の困惑の表れとも読める。
この先どうなる
次の焦点はイラン情勢の着地点だ。トランプ政権が和平交渉を模索しているとも伝わっており、停戦の見通しが立てば、エネルギー価格の落ち着きとともに利下げへの扉が開く可能性がある。逆に戦闘が長引けば、FedもBOEも「動けないまま動かざるを得ない」状況が続く。市場が最も嫌うのは不透明感の長期化で、今はまさにその入り口に立っている。次のFOMCとBOE会合がどんな言葉を選ぶか——その「言葉の温度」が、当面の注目どころになりそうだ。