ホルムズ海峡封鎖の解除を目指す外交交渉が動いている、まさにその最中に撃墜が起きた。米軍がイランのドローンを破壊したとブルームバーグが伝えており、暫定和平合意への道筋に新たな亀裂が入った格好だ。タイミングが悪すぎる、というのが正直な印象だった。
世界の石油2割が通る水路で何が起きたか
ホルムズ海峡は、世界の海上石油輸送量のおよそ20%が通過する。サウジアラビア、イラク、UAE、クウェートなどの原油がここを経由して市場へ向かう。この水路が長期的に機能不全に陥れば、エネルギー市場へのインパクトは単純な価格上昇にとどまらない。供給網の再設計を迫られる国も出てくるだろう。
今回、米軍はドローン撃墜を「自衛行動」と位置づけたという。外交テーブルは維持するという立場も変えていない。軍事と交渉を同時並走させるという手法は珍しくないが、相手方への心理的な影響は無視できない。
「米国はホルムズ海峡付近でイランのドローンを撃墜した。この戦略的水路を再開するための暫定和平合意に向けた交渉が継続する中での出来事であり、合意がいつ達成されるかについての不確実性が高まった」(Bloomberg)
この一文が示すのは、撃墜そのものより「不確実性の高まり」のほうが問題だということだ。交渉は続いているが、テーブルの上の空気は確実に変わった。
米イラン暫定合意、3つの障壁
今回のドローン撃墜で浮き彫りになったのは、米イラン暫定合意が抱える構造的な難しさだった。第一に、軍事的な偶発事案が交渉の流れをリセットしうること。第二に、イラン国内でも強硬派と穏健派の綱引きがあり、合意に向けた国内合意形成が一筋縄ではいかないこと。第三に、ホルムズ海峡の再開という利害を共有しながらも、その条件をめぐる隔たりがまだ埋まっていないこと。
調べていくと気になったのは、封鎖の長期化によって最も直撃を受けるのが、実は米国の同盟国であるという点だった。日本、韓国、欧州各国はホルムズ依存度が高く、交渉の行方を固唾を飲んで見守っている。
この先どうなる
米国は外交と軍事の並走を続ける方針らしいが、撃墜事案が重なるほど合意の窓は狭まっていくとみるのが現実的だろう。イラン側が「誠実な交渉」の条件として軍事行動の停止を求めてくれば、米国の立場は一気に複雑になる。原油市場はまだ大きく動いていないが、それは「まだ」にすぎない。ホルムズ海峡封鎖が長引けば、静観を続けられる投資家はいない。次の撃墜があるか、それとも暫定合意の署名があるか。どちらが先かで、夏の市場の色が決まる。
