イラン核交渉が、もっとも厄介な相手に直面している。イラン国内の議会強硬派だ。ロイターが報じたところによれば、イランの議員が現在交渉中の対米合意草案について「以前の版よりもはるかに有害だ」と公然と批判した。この発言、単なる不満表明じゃない。合意を国内で葬るための、最初の一手と見るべきだろう。
「以前より有害」——議員発言が交渉を直撃した理由
イランと米国の間では、オマーンを仲介役とした複数ラウンドの間接協議が続いてきた。表向きは進展しているように見えたが、調べると毎回同じ構図が浮かぶ。交渉チームが外で詰めるたびに、国内強硬派が足を引っ張る。今回もその再演らしい。
問題の発言を行ったのは、イラン議会内でも対米強硬路線を主導するグループに近い議員とされる。草案の具体的な内容は明かされていないが、「以前より後退した条件」が含まれているとみられている。制裁解除の範囲が縮小されているか、核活動の制限が強化されているか——どちらにせよ、強硬派が「屈辱的な妥協」と映る内容だったと考えられる。
「イランの議員が、米国との合意草案は以前の版よりも有害だと述べ、核合意に向けた交渉を複雑化させていると報じられた。」(Reuters)
この批判が議会内で広がれば、仮に交渉チームが合意に達したとしても国内批准を通過できない可能性がある。イランでは最高指導者ハメネイ師の意向が最終的な決定権を持つが、議会の空気は無視できない政治的圧力として機能してきた歴史がある。
合意が潰れたとき、原油市場はどう動くか
米イラン合意草案が破綻した場合、最も早く反応するのは原油市場だろう。イランは日量約300万バレルの生産能力を持つ。合意が成立すれば制裁解除で輸出が増え、原油価格には下押し圧力がかかる。逆に交渉が崩壊すれば、中東の地政学リスクが再燃し、ホルムズ海峡をめぐる緊張が価格を押し上げる展開もありうる。
市場はすでにイラン核交渉の行方を織り込み始めており、今回の議員発言は小さくない材料になった。「外交の窓はかろうじて開いているが、急速に狭まっている」というロイターの表現は、取材現場のリアルな体感を伝えているように思える。
日本にとっても対岸の話ではない。エネルギー輸入の中東依存度を考えれば、イラン議会強硬派の一言が、数ヶ月後の電気代に跳ね返ってくるシナリオだって十分にありうる。
この先どうなる
焦点は二つ。ひとつは、ハメネイ師が強硬派の声を抑えて交渉継続にゴーサインを出すかどうか。もうひとつは、米国側がイランの国内政治事情を考慮して草案を修正するかどうかだ。どちらも簡単ではない。トランプ政権は「最大圧力」路線の看板を完全には下ろしておらず、大幅な譲歩は国内向けに説明しにくい。イラン側も、強硬派を抑え込むための政治的コストが高すぎる状況になりつつある。外交の窓が閉じるまでのタイムラインは、思ったより短いかもしれない。