SpaceX IPOの調達額が750億ドルに達した。1株135ドル、発行株数5億5560万株。これまでの最大IPO記録を軽く踏み越えてきた数字を見て、正直「桁が違う」と思わず確認した。サウジアラムコが2019年に記録した256億ドルの約3倍。宇宙企業が石油メジャーの調達記録をここまで叩き潰した事実は、かなりインパクトがある。
時価総額1.77兆ドル——スペースXはもはや「民間企業」の枠に収まらない
ナスダック上場後の時価総額は1.77兆ドル。これはトヨタやサムスン、さらにサウジアラムコの現在の企業価値をも上回る水準だ。宇宙輸送、衛星インターネット、政府向け打ち上げ契約——複数の収益柱が同時に育った結果、市場は「民間宇宙会社」ではなく「宇宙インフラ企業」として値付けをした、ということだろう。ナスダック上場2026という文脈で語られるとき、この企業が半導体や石油と並ぶ国家インフラに分類された瞬間として歴史に残るかもしれない。
「スペースXは5億5560万株を1株135ドルで売却し、時価総額1.77兆ドルで史上最大のIPOを達成した。イーロン・マスクは世界初の兆万長者になる可能性がある。」(Bloomberg、2026年6月11日)
Bloombergが「兆万長者(trillionaire)」という単語を使ったのも引っかかった。マスクの保有株が上場後に評価されれば、個人資産が1兆ドルを超える可能性があるという試算だ。ビル・ゲイツもベゾスも届かなかった水準。ただ、これが単なる「お金持ち話」で終わらないところが今回の厄介な点でもある。
スターリンクを握る男が兆単位の資本を持つと、何が起きるか
スターリンクはいまや約100か国以上で展開する衛星通信インフラだ。ウクライナ戦争での使用事例が示したように、紛争地帯の通信維持を左右する力を持っている。そのインフラを実質的に支配するイーロン・マスクが、今回のIPOによってさらに巨大な資本調達力を手に入れた。市場がその地政学的リスクをどこまで株価に織り込んでいるかは、正直見えにくい。競合他社の規制がある金融機関や電力会社とは違い、スペースXには宇宙・通信分野での国際的な監督枠組みがほとんど存在しないのが現状だ。イーロン・マスク兆万長者の誕生が「富の象徴」だけでなく、インフラ支配の話として語られ始めているのは、そういう背景がある。
この先どうなる
上場後の焦点は大きく二つ。一つは株価の維持——時価総額1.77兆ドルが正当化されるには、スターリンクの有料契約者数拡大と火星ミッションの具体的な収益化が必要になってくる。もう一つは規制の動向だ。米議会や欧州委員会が「通信インフラを握る上場企業」への新たな監督枠組みを議論し始める可能性は低くない。SpaceX IPOは終わったが、この上場が何をひっくり返したのかは、これから数年かけて見えてくるんじゃないか。