PIMCOのイヴァシン最高投資責任者が発した警告の中身が、じわじわと市場関係者の間で話題になっている。「複雑な信用構造の膨張」という表現——これ、2008年のあの夏にも聞こえてきた言葉と、ほぼ重なるんじゃないか。
PIMCOが名指しした「見えないリスク」の正体
イヴァシンがBloombergを通じて問題視したのは、プライベートクレジットやCLO(ローン担保証券)など、透明性の低い複合商品が機関投資家のポートフォリオに急速に入り込んでいる実態だ。低金利時代に利回りを追い求めた結果、何層にも組み替えられた信用リスクが、気づけば市場全体に染み渡っていた。
2008年のサブプライム危機でも、問題の発端は似たようなルートだった。ローンを細切れにして再パッケージし、格付けをまとわせ、最終的に誰がリスクを抱えているのか分からなくなった。損失が顕在化したとき、「自分のポートフォリオにそれが入っているのか」を把握できる投資家がほとんどいなかった。
「複雑な信用構造の急速な膨張は、世界金融危機前夜の積み上がりを想起させる」——PIMCO CIO ダン・イヴァシン(Bloomberg、2026年6月)
今回も構図が重なる。プライベートクレジット市場は過去5年で急拡大し、一説には世界規模で2兆ドルを超えるとも言われる。CLO残高も高水準が続く。どちらも規制の網が薄く、流動性リスクの評価が難しいことで知られる市場だ。
CLOとプライベートクレジット——利回りの罠に気づいたとき
金融工学の信用構造が崩壊リスクを高めるのは、単に商品が複雑だからではない。投資家が「利回りが出ているうちは中身を問わない」という行動パターンをとるからだ。年金基金や保険会社など長期投資家が、規制の目が届きにくいプライベートクレジットに資金を移した結果、損失が発生したときの「出口渋滞」が深刻になりうる。
CLOについても、担保となるレバレッジドローンの借り手企業の財務悪化が静かに進んでいるとの指摘が出始めている。金利高止まりが続く環境下で、あの複合商品の格付けが実態を反映しているのか——そこを問い直す声が、ここへきて増えてきた印象がある。
PIMCOほどの規模の運用会社が公式に「リーマン前夜に似ている」と発信する意味は軽くない。同社は2008年の危機でも早期に警鐘を鳴らした実績がある機関だけに、今回の発言を「単なるポジショントーク」と片付けるのはちょっと早計ではないか。
この先どうなる
市場がこの警告をどう織り込むかは、今後数週間の動きで見えてくるだろう。当面の注目点は三つ。①プライベートクレジット市場への資金フローが鈍化するか、②CLO格付けの見直し動向、③連邦準備制度や各国規制当局がこの種の「影の信用膨張」に対して規制強化のシグナルを出すかどうか。イヴァシンの警告が「外れてよかった」で終わるのか、それとも的中フラグになるのか——答え合わせの時間軸は、意外と短いかもしれない。
