ムワッファク・サルティ空軍基地に弾道ミサイル12発——これが2日連続交戦の夜に叩き込まれた数字だった。現地時間5月22日、イランの革命防衛隊(IRGC)はヨルダン中部アズラクの米軍拠点を狙って一斉発射。バーレーンとクウェートの米軍施設にも攻撃の手が伸び、中東全域が一夜にして戦場の体裁を帯びた。

トランプ宣言から数時間後、米中央軍CENTCOMがイランを先制

時系列を追うと、先に動いたのは米側だった。トランプ大統領が「イランを強烈に叩く」と公言した直後、米中央軍CENTCOMはイラン南部の軍事・監視・レーダー施設への「自衛的打撃」を完了したと発表。その数時間後、イランが報復に出た格好になる。

イラン革命防衛隊は国営メディアを通じ、「多数の米軍戦闘機と施設を破壊した」と戦果を強調。ただしヨルダン側の発表は真逆で、軍当局者は「20発を迎撃・撃墜、人的被害も物的損害もなし」と述べている。どちらの情報が正確かは現時点で独立した検証ができていない。

「今回の攻撃は2か月前の停戦を実質的に無効にした犯罪行為であり、その極めて深刻な結果に対する責任は米国の指導者にある」——イラン外務省声明(BBCより)

バーレーン内務省はSNSに、迎撃されたイランのドローンの残骸とみられる損傷写真を投稿。被害の程度は限定的だとしつつも、首都マナーマに近い米海軍第5艦隊司令部が標的圏内に入っていた可能性は否定できない。

4月停戦はなぜ2か月で崩れたのか

4月に成立した米・イラン停戦は、ホルムズ海峡封鎖リスクの低減と原油価格の安定を市場に約束したものだった。だが今回イラン外務省は「停戦は事実上意味をなさなくなった」と言い切った。停戦合意の文書に具体的な攻撃禁止条項がどこまで盛り込まれていたのか、その中身が今後の焦点になりそうだ。

米側の論理は「自衛」。イラン側の論理は「停戦違反への正当な報復」。同じ出来事への正反対の解釈が、さらなるエスカレーションの口実として積み上がっていく——このパターン、どこかで見た気がしないか。

この先どうなる

イランが「停戦無効」を公式に宣言した以上、次の攻撃に法的な歯止めはなくなった。米国内ではヘグセス国防長官が「拡大も辞さず」と発言しており、追加打撃の承認を得るまでのハードルは低い。一方でイランは核濃縮の再開を警告済みで、軍事圧力と核交渉の駆け引きが同時進行する複雑な局面に入った。ヨルダン・バーレーン・クウェートという友好国の領土が戦場の外縁に引き込まれていること自体、中東全体の地政学的なリスクを押し上げている。当面は米中央軍CENTCOMの次の動向、そしてイラン革命防衛隊が「第2波」を準備しているかどうかが最大の注視点になるだろう。