トランプ イラン合意を「数日以内に最終化」と宣言した直後、テヘランが即座に否定した。ブレント原油はその一報だけで4.4%急落し、1バレル89ドルまで叩き売られた――市場がいかに「停戦期待」に飢えていたかが、この数字一つでわかる。

トランプが3夜連続の攻撃を突如キャンセル、その理由は「素晴らしい和解」

発端はトランプ大統領の発言だった。木曜にイランへの「非常に激しい攻撃」を予告しておきながら、数時間後には一転してキャンセルを表明。交渉担当者が「great settlement(素晴らしい和解)」をまとめたというのが理由で、欧州での署名式まで「おそらく実現する」と記者団に語った。

さらに会見でこう続けた。

「イランが核兵器を永遠に持てないという合意がある。それがわれわれの経なければならなかった一切の目的だった」(トランプ大統領)

聞こえはいい。ただ、同じようなセリフは今回が初めてではない。BBCの報道によれば、トランプはこれまでも「合意が近い」と繰り返し発言しては、実際の合意が成立しなかったケースが複数ある。

イラン外務省「報道は憶測」、ホルムズ海峡封鎖は継続中

テヘラン側の反応は冷ややかだった。イラン外務省報道官のエスマイル・バガエイ氏は国営テレビを通じて「報道は憶測に過ぎず、何も確定していない」と明言。米側の発表と真っ向から食い違う形になった。

背景を整理するとこうなる。米国とイスラエルが2月28日にイランへの広域攻撃を開始し、イランは報復としてイスラエルと湾岸の米同盟国を攻撃。さらにホルムズ海峡封鎖に踏み切った。世界の石油・LNG輸送の要衝が事実上閉鎖されたわけで、ブレント原油急落の前にはこの封鎖という重大なリスクがずっとのしかかっていた。4月に一度停戦合意があったにもかかわらず、今週だけで2度の報復合戦が起きていたのだから、市場の神経が過敏になるのも無理はない。

「合意が近い」というトランプ発言で原油が4.4%も動くということは、ホルムズ海峡封鎖の解除がどれだけ市場に織り込まれていないかを示している。逆に言えば、交渉が破談になった瞬間の跳ね返りも相当なものになりそうだ。

この先どうなる

焦点は「数日以内」とされる文書最終化が本当に実現するかどうか。米側は署名式の場所として欧州を挙げており、第三国の仲介という枠組みは整いつつあるとも読める。一方でイランの核交渉は過去にも直前で頓挫してきた経緯があり、バガエイ報道官の言葉を額面通りに受け取れば、まだ実質的な合意文書は存在していないことになる。

ブレント原油が89ドルで落ち着くか、それとも交渉決裂の報を受けて再び跳ね上がるか。次の数日間が分岐点になる。市場とテヘラン、どちらが正しいかを知るのはもう少し先の話だろう。