米イラン空爆が双方向で始まった今、最初に動いたのは一機のヘリコプターだった。米陸軍機がイランの関与とされる攻撃により撃墜され、トランプ大統領はテヘランに直接責任があると断定。即座に空爆命令を下したとAPが報じた。イランはそのまま引かず反撃に踏み切り、大国間の空爆の応酬という、冷戦後に前例のない局面が動き出している。

ヘリ1機が引いた引き金、トランプが48時間以内に下した決断

米陸軍ヘリの撃墜が確認されたのは中東展開中の任務中とされる。トランプ政権はイランの関与を即日断定し、外交的猶予を設けないまま空爆を命令した。この判断の速さは、2020年のソレイマニ司令官殺害命令と重なる部分があって、政権内に「対話より先制」という判断軸が根強く残っているとみていい。

「トランプ大統領がテヘランによる米陸軍ヘリコプター撃墜を非難した後、米国とイランは互いへの空爆を開始した」(The Associated Press)

イランが反撃に出た背景には、国内の政治圧力がある。最高指導者ハメネイ師の権威を維持するうえで、無抵抗は選択肢にならない。ただ、全面戦争に踏み込む経済的体力がイランに残っているかどうかは別の話で、今回の反撃がどこまでの規模だったかが次の焦点になりそうだ。

ホルムズ海峡「2割封鎖」が現実味を帯びてきた理由

中東紛争拡大で最も警戒されているのが、ホルムズ海峡の通航リスクだ。同海峡は世界の原油供給の約2割が通過するルートで、イランはこれまでも緊張が高まるたびに「封鎖」をちらつかせてきた。今回は空爆の応酬まで発展しており、タンカー各社はすでにルート変更の検討に入っているという情報もある。

エネルギー市場への影響は価格だけではない。代替ルートであるアフリカ南端回りは輸送日数が3週間近く延びるため、アジア向け原油の供給スケジュール全体が乱れる可能性がある。日本も例外ではなく、中東依存度の高い石油輸入の構造がここで改めて問われる形になった。

安全保障専門家の間では、イスラエルや湾岸諸国が何らかの形で引き込まれるシナリオを深刻視する声が出始めている。ヒズボラや親イラン民兵組織が「第二戦線」を開く動きに出れば、米軍の対応リソースは中東全域に分散することになりかねない。

この先どうなる

直近の焦点は、今回の空爆がどの程度の規模で、双方が「ここまで」と認識できるラインを引けるかどうかだろう。トランプ政権は圧力外交の延長として捉えているとみられるが、イランが国内向けに「反撃した」という実績を作った以上、次の停戦ラインは自然には決まらない。国連安保理は緊急会合を求める動きが出ているが、拒否権を持つ大国の足並みが揃う見通しは薄い。陸軍ヘリ撃墜という一点が、これほど速く双方の空爆まで転がるとは多くの専門家も想定外だったはずで、次の「一点」がどこで起きるかを今は誰も読み切れていない状況だ。