米イラン軍事衝突が2日連続で起きた――この事実だけで、原油市場と外交筋の両方が同時に青ざめた理由がわかる。ニューヨーク・タイムズは今回の応酬を「中東における全面戦争への回帰という亡霊を呼び起こしている」と表現し、単なる局地的な摩擦としては受け取れないシグナルを世界に送った。

ホルムズ海峡「2割遮断」で何が起きるか

調べてみると、改めて数字の重さがわかった。世界の原油輸送のおよそ2割が通過するホルムズ海峡。ここが完全に閉じた場合、日本は最も脆弱な立場に置かれる輸入国のひとつになる。

中東産原油への依存度が9割を超える日本に対し、代替となるカナダ・米国・西アフリカ産の受け入れ体制はまだ本格稼働していない。欧州もインドも状況は似たようなもので、「準備が追いついていない」という言葉がこれほどリアルに刺さる局面も珍しい。

「この応酬は、中東における全面戦争への回帰という亡霊を呼び起こしている。」― The New York Times

ホルムズ海峡封鎖リスクが現実味を帯びるたびに、市場は過去に何度か急騰を経験してきた。ただ今回が過去と違うのは、外交的な緩衝材がほぼ消えかけている点だ。

2日連続交戦が「出口」を狭めていく理由

1日の衝突なら「偶発」と説明できる余地がある。2日連続になると、それが意図的なエスカレーションに見えはじめる――少なくとも相手側には。外交チャンネルが機能を失いつつある中で、この「2日連続」という事実が交渉テーブルに戻る選択肢をどれだけ狭めているか、冷静に見る必要がある。

米イラン軍事衝突の文脈でいえば、双方ともに国内向けの「強硬姿勢」を示す政治的インセンティブがある。そのインセンティブが外交的解決の声を上回るとき、局地的な応酬は全面的な衝突へと滑り落ちていく。歴史はそのパターンを何度も繰り返してきた。

中東全面戦争というシナリオを「起きない前提」で無視するのではなく、「もし起きたら」の試算を各国政府が本格的に始めているのが現状らしい。それ自体が、事態の深刻さを示している。

この先どうなる

当面の焦点は3つ。第一に、米国とイランが3日目以降も交戦を続けるか。第二に、ホルムズ海峡での実力行使に踏み切る動きが出るか。第三に、国連や第三国が仲介に入れる外交空間がまだ残っているかどうか。

イランは核濃縮問題を背景に持ち、米国は大統領選後の政治サイクルの中にいる。どちらも「引く理由」を国内向けに説明しにくい状況で、しばらくは緊張が高止まりしそうだ。エネルギー市場は今週、ホルムズ海峡の動向を1時間単位で見ることになる。