タイル・デッバ空爆で9人が死亡した水曜日、レバノン南部に4波の攻撃が降り注いだ。イランが「止めろ」と警告を発してからわずか数時間後の出来事だった。
レバノン国営通信(NNA)によると、この日の空爆による死者は計17人。最も被害が集中したのはティール港湾都市の東に位置するタイル・デッバで、イスラエルの戦闘機とドローンが少なくとも4波の攻撃を繰り返した。
「タイル・デッバの町への一連の空爆で9人が死亡した」(レバノン国営通信・NNA)
周辺のデイル・カノン・エル・ナハル村でも3人、セッディキンでも2人が命を落とした。さらに夕刻には、ベイルートとティールのほぼ中間に位置する海岸都市シドンの中心部でも攻撃が確認されている。
イランが警告した翌日に17人死亡、空爆はなぜ止まらないのか
前日の火曜日にも15人がレバノン南部イスラエル攻撃で犠牲になっている。その日、イランはイスラエルに対してヒズボラへの攻撃継続を止めるよう警告を発していた。それでもイスラエルは攻撃をやめなかった。
イスラエル側の論理はシンプルで、「ヒズボラの軍事拠点を無力化するまで手を緩めない」というものだ。一方ヒズボラも、レバノン南部を占拠するイスラエル軍に対して攻撃を継続しており、双方の応酬は泥沼の様相を呈している。
注目すべきはイランの立ち位置の変化だろう。イラン指導部は現在、米国との核協議と並行して、「レバノン問題をセットで解決しない限り合意しない」とトランプ政権に迫っているらしい。これがイラン停戦交渉条件として浮上してきたことで、米国・イラン・イスラエル三者の利害調整は急激に複雑になってきた。
シドンまで空爆が拡大——戦線はどこまで広がるか
今回の攻撃でもう一つ見逃せないのが、シドンへの攻撃だ。シドンはレバノン第3の都市で、ティールとベイルートのほぼ中間に位置する。これまでの攻撃が南部の農村・小都市に集中していたことを考えると、都市部への攻撃拡大は一つのエスカレーションの節目と見ることができる。
ヒズボラは今のところ、攻撃に対して継続的に反撃を行っている。大規模な反攻に出るかどうかは不明だが、イランの警告が無視され続ければ、代理勢力への「行動で示す圧力」が強まる可能性はある。
この先どうなる
最大の焦点はイラン停戦交渉条件の行方だ。米国・イランの核交渉でレバノンが議題に組み込まれるかどうかが、攻撃継続か停戦移行かを左右するカギになりそう。トランプ政権はイスラエルへの圧力を表立ってかけることには慎重とみられるが、外交的コストは積み上がっている。タイル・デッバの数字が毎日塗り替えられていく状況が、どこかで政治的な転換点を生むかもしれない。