タンカー「セッテベッロ」のエンジン室に精密誘導弾が撃ち込まれたのは、米軍がホルムズ海峡封鎖に踏み切ってからわずか数週間後のことだった。乗組員24名のうちインド人21名は救助されたが、残る3名の行方がいまも分かっていない。

8隻目の無力化――インド人船員が2週連続で被害

米中央軍(CENTCOM)の発表によれば、パラオ船籍のセッテベッロは「イランからの石油輸送を試みた」として標的になった。「乗組員が米軍の指示に繰り返し従わなかったため」という理由でエンジン室に弾を撃ち込まれ、航行不能に。4月13日の封鎖開始以降、無力化された船舶はこれで8隻、針路変更を強いられた船は134隻にのぼる。

ここで引っかかったのは、被害者の国籍の偏りだ。今週だけで同種の攻撃が2件発生し、どちらも多数のインド人が乗船していた。先の事案では同じパラオ船籍のタンカー「マリヴェックス」が撃たれ、乗組員24名全員がオマーン軍に救助されている。インド人乗組員が集中する商船が連続して巻き込まれている格好だ。

「この地域での商業船舶および民間インフラへの攻撃は終わらせなければならない」――インド政府声明(BBC報道より)

インド政府はこの声明を出したうえで、在デリーの米国代理大使を呼び出した。外交的な「召喚」は抗議の意思を公式に示す行為で、両国関係の温度が一段下がったことを意味する。

世界の石油20%が通るルートで何が起きているか

ホルムズ海峡は世界の石油・ガス供給量の約20%が行き来する航路。イランが実質的に海峡を閉鎖したことへの対抗措置として、米軍がイランの港へのアクセスを遮断したのが今回の封鎖の発端だった。

オマーン湾タンカー攻撃が続くなか、エネルギー市場だけでなく外交地図も動いている。インドはこれまで米国との関係を重視しながらもロシアやイランとの独自パイプを維持してきた国だ。今回の「召喚」はその綱渡りに亀裂が入りかけているサインかもしれない。

この先どうなる

行方不明の3名の生存確認が最優先課題だが、捜索の進捗はまだ報じられていない。米印間の外交協議がどこまで踏み込むかも注目点で、インドが公式な停止要求を文書で提出するかどうかで局面が変わってくる。トランプ大統領はイランを「強く叩く」と発言しており、封鎖が緩む気配は今のところない。第三国の船員が被害を受け続ける構図が変わらない限り、抗議する国はインドだけにとどまらないだろう。