習近平訪朝2025——このニュースを聞いて、「なぜ今なのか」と引っかかった人は多いんじゃないか。AP通信が報じた来週の平壌訪問、前回は2019年。その間に世界はコロナを経て、ウクライナ戦争が長期化し、北朝鮮はロシアに砲弾と兵員を送り込んだ。偶然の訪問タイミングとは、とても思えない。

トランプが動く横で、習近平が平壌へ向かう理由

ワシントンが今、外交のチェス盤を動かしている。ウクライナ停戦の仲介、イランとの核協議、インド太平洋での同盟再編——トランプ政権は矢継ぎ早に外交カードを切ってきた。そのタイミングで北京が選んだのが、平壌への直行便だった。

読み方はシンプルで、「米国が主導権を握る前に、もう一枚のカードを手元に置いておく」という動きに見える。金正恩との中朝首脳会談で何が話し合われるか、公式発表は当然のごとく「友好と協力」になるだろう。ただ、水面下でやり取りされるのは経済支援の条件と、核・ミサイル開発をどこまで容認するかの暗黙の線引きだろう。

「中国の習近平国家主席が来週、北朝鮮を訪問する。2019年以来初の訪朝となる。」——AP通信

注目すべきは北朝鮮側の立場の変化だ。ロシアへの兵器・兵員供給で欧米からの孤立はさらに深まったが、その一方で「軍事技術を持つ交渉相手」としての存在感は増している。制裁で締め上げられているはずの国が、地政学的に値段のつく存在になっているのが現状らしい。

非核化の建前が、また一歩遠のく

「朝鮮半島の非核化」——この言葉、ここ数年でどれだけ空洞化したか。北朝鮮の核戦略と中国の関係を追っていると、習近平が今回の訪問で核抑制を強く求めるシナリオは、正直かなり薄い気がする。それよりも「ロシア・中国・北朝鮮の三角形」を固め直し、対米交渉での選択肢を増やす絵を描いているんじゃないか。

中国にとって核武装した隣国はリスクでもある。ただ、米国主導の東アジア秩序に対するカウンターとしては、その核の存在が「抑止力の傘」として機能する面もある。習近平がこの矛盾を抱えたまま平壌に降り立つ、というのが今回の構図だった。

この先どうなる

会談後の共同声明の文言が最初の注目点になる。「非核化」という語が入るかどうか、それだけで各国の外交的反応は変わってくる。韓国と日本はすでに警戒モードで、米国との連絡を密にしているはずだ。トランプ政権がこれにどう反応するか——北朝鮮問題を「自分が解決できるディール」と見ているトランプが、習近平の動きを「邪魔」と受け取るか「交渉材料」と読むか、そこが次の焦点になってくる。平壌でどんな握手が交わされたか、じわじわと漏れ出てくる情報を追うしかない。