中国半導体株の時価総額が9000億ドルを超えた――それ自体より驚くのは、米国の輸出規制が強化されるたびに株価が上がっているという事実だ。Bloombergが2026年6月5日に報じた内容によると、中国の半導体銘柄の上昇は、相次ぐIPOとファーウェイ・テクノロジーズの新技術計画によってさらに延伸する見通しという。
ファーウェイ新技術計画が火をつけた9000億ドルの波
今回のブームを牽引しているのは、大きく二つの流れだった。一つは国策に乗った半導体企業群の相次ぐIPO。中国政府の産業補助金と政策融資が背景にあり、新規上場銘柄への資金が集中している。もう一つがファーウェイの次世代技術計画で、先端半導体の自社開発加速を示す内容が市場の期待感を一気に引き上げた。
面白いのは、米国の制裁が「重圧」として機能しているはずなのに、その重圧が逆に国内調達の必要性を正当化し、投資資金を呼び込む構図になっているところ。デカップリングが中国半導体市場の需要を外部から保証しているような格好だ。
「中国の半導体株の上昇は、相次ぐIPOとファーウェイ・テクノロジーズの新技術計画によって、さらに延伸する見通しだ」(Bloomberg、2026年6月5日)
調べていて引っかかったのは、このブームが投機的な熱狂とは少し性質が違うという点だ。AI需要の世界的な拡大が半導体全体の需要を底上げしており、中国企業がその恩恵を受けながら同時に国産サプライチェーンも構築しつつある。二重の追い風が吹いている状態といえる。
米中輸出規制の「抜け穴」ではなく、別ルートの完成
米国の輸出規制と制裁は、先端半導体製造装置や高性能チップの対中供給を制限してきた。ただ現場で起きていることを見ると、完全な封鎖には至っていないらしい。中国は規制対象外の旧世代装置を大量に積み上げ、設計の工夫で性能を補う方向に振り切ったようだ。
ファーウェイが2023年に投入した「Mate 60 Pro」が象徴的だったが、今回の新技術計画はその延長線上にある。外からパーツを買えないなら、自分で作る。そのサイクルが資本市場に「成長ストーリー」として認識され始めている。ファーウェイ新技術計画への期待がそのまま株価の数字に変換されている、というわけだ。
セカンダリとして見逃せないのは、中国国内の個人投資家と機関投資家が半導体セクターに向かっている点だ。不動産市場の低迷が続く中、「国が育てる産業」への集中が鮮明になってきた。米中輸出規制の強化がかえって「国策銘柄」のお墨付きを高める皮肉な効果を生んでいる。
この先どうなる
市場参加者の間では、IPOラッシュがしばらく続くという見方が多い。中国政府が半導体産業を「自立経済圏」の核と位置づけている以上、上場支援の政策的動機は消えにくい。ファーウェイの次世代技術計画の具体的な内容が開示されるタイミングで、さらなる上昇トリガーになる可能性もある。
一方でリスクもはっきりしている。米国が規制の網をさらに絞り、同盟国を巻き込んだ多国間規制に移行した場合、現在の「別ルート」戦略も壁にぶつかりかねない。9000億ドルの数字が実力なのか、政策期待の前借りなのか――それが問われるのはもう少し先の話になりそうだ。