レバノン空爆で救急車ごと吹き飛ばされた——そんな報告が届いたのは、停戦合意からわずか2日後のことだった。イスラエル軍による南部への攻撃は9人の命を奪い、そのうち2人は救急隊員。シェフール地区で出動中の救急車が直撃を受けたという。民間人でも兵士でもなく、負傷者を助けに向かった人間が標的になった形で、これはさすがに見過ごせない。
停戦合意から48時間、何が起きたのか
月曜日に結ばれた「部分的停戦」の中身はこうだった。イスラエルはベイルートへの爆撃を控える、その代わりにヒズボラはイスラエルへの攻撃をやめる——シンプルな交換条件だったはずだ。ところが水曜日、ベイルート南方でも乗用車が空爆を受け、ヒズボラ側はイスラエル北部へのロケット弾発射を認めた。イスラエル軍も無人機1機と飛翔体2発を迎撃したと発表している。双方がほぼ同時にルール違反を犯した格好で、停戦の「部分的」という言葉の薄さが改めて際立った。
「レバノン保健省は、死者の中に南部シェフール地区での空爆で救急車が直撃された2名の救急隊員が含まれると発表した。」
ここで気になるのは時系列だ。ヒズボラはイスラエル軍の集結に対してロケットを撃ったと主張している。どちらが先に動いたかは現時点でも不明で、「先に仕掛けたのはどっちか」という話になると、どちらも自分は反撃だと言い張る構図になる。こういう事態を想定していなかったのか、合意文書の抜け穴が最初から大きかったのか、そこが引っかかった。
ルビオが「行動計画」を求めた日、現場では砲声が響いていた
水曜、ワシントンではイスラエルとレバノンの外交官が2日連続で協議を続けていた。米国務長官マルコ・ルビオは記者団に対し、「ヒズボラから独立したレバノン安全保障の軌道に向けた行動計画」を期待すると語っている。外交の舞台では言葉が積み重ねられていたが、その数時間後には現場から死者の報告が届いていた。この同時進行ぶり、なんとも皮肉な絵だった。
ヒズボラ停戦崩壊が加速する背景には、もともと合意の基盤が脆かったという事情もある。4月16日に米国が仲介した最初の停戦は機能せず、先週ネタニヤフ首相がヒズボラへの攻撃強化を命じていた。レバノンが今回の戦争に引き込まれたのは3月2日。ヒズボラがイランの最高指導者を殺害したイスラエルへの報復としてロケットを撃ち込んだことが発端で、それ以来イスラエル軍による空爆と南部への地上侵攻が続いてきた。イスラエル軍レバノン侵攻はすでに2ヶ月を超えており、停戦の試みが繰り返し失敗してきた歴史がある。
この先どうなる
ワシントンの外交協議が「行動計画」をまとめられるかどうかが、当面の焦点になりそうだ。ただ、現場では停戦の枠組みが機能する前に双方の攻撃が再開されており、合意文書の内容よりも現地の軍事的判断が先行している状態が続いている。今回のように救急隊員が犠牲になる事態が続けば、レバノン国内の世論がどう動くかも変数になってくる。ルビオがどこまで両者を引き留められるか——それともまた「停戦崩壊」の声明を読む羽目になるか。中東情勢を占う上でここ数日が正念場になりそうだ。