国連飢餓警告が「異例の緊急レベル」に引き上げられた。現在、世界で3億人を超える人々が深刻な食料不足に直面しており、FAOはこのまま国際社会が動かなければ、今後12か月でさらに数千万人規模の悪化があり得ると明言している。数字が大きすぎて実感が薄れそうだが、これは日本の総人口の2倍以上が「今日食べるものがない」状態に近いということだ。
小麦が消えた。3つの震源地が同時に壊れている
調べてみると、今回の危機は一つの原因で説明できない複合的な崩壊だとわかった。ウクライナ紛争で黒海ルートの小麦輸出が滞り、コンゴでは武装勢力の衝突が農業インフラを破壊し続けている。そこにオーストラリアの小麦生産が前年比26%急減という数字が加わった。
この3点が同時に損傷したグローバルサプライチェーンは、一か所を修復しても全体が回復しない構造になっている。特に打撃が大きいのはサハラ以南アフリカ、イエメン、そしてガザ地区。もともと輸入依存度が高い地域に、輸送コスト上昇と現地通貨安が重なり、市場に食料があっても「買えない」状況が広がりつつあるらしい。
「国連は世界的な飢餓リスクの拡大を警告し、紛争・気候変動・経済的圧力が数億人を急性飢餓へと追い込んでいるとして、即時行動を求めた」(AP通信)
FAO食料危機の文脈でいえば、「急性飢餓」という言葉が肝で、これは慢性的な栄養不足とは別カテゴリー。数週間単位で死亡リスクが生じる緊急状態を指す。その水域に3億人が踏み込んでいるという話だ。
食料危機が「次の紛争」を生む連鎖
国連がここまで声を上げる背景には、グローバルフードセキュリティの崩壊が単なる人道問題に収まらないという判断がある。歴史を振り返ると、2010〜11年の食料価格急騰は「アラブの春」の一因になったと指摘されてきた。食料を買えない層が増えると、政府への不満が噴出し、難民流出、政情不安、そして新たな武力衝突へとつながる連鎖が繰り返されてきた。
今回はその複数のトリガーが同時に引かれている状況で、しかも主要な支援国が自国のインフレ対策や安全保障費の増大を抱えており、人道支援の予算が後回しになりやすい局面でもある。ここが引っかかったところで、「警告は出た、でも財布が開くかどうか」は別問題ということになる。
この先どうなる
FAOと世界食糧計画(WFP)は共同で各国政府への緊急資金拠出を求めており、今後数か月が分岐点になりそうだ。ウクライナ情勢が停戦に向かえば黒海ルートの回復という光明もあるが、それが現実になるまでの「空白期間」に何人が飢餓に陥るかは、今動くかどうかにかかっている。オーストラリアの生産減少は気候由来の部分が大きく、来年度も同水準が続く可能性があると農業当局者は見ているらしい。数字の大きさに慣れてしまわないことが、まず必要なことかもしれない。