中国国営企業による海外鉱山買収が、一社への集約という形で新たな段階に入った。Bloombergが2026年6月3日に報じたところによると、北京は海外の金属・鉱業取引を調整・統括する国営投資会社を新たに選定したという。コバルト・リチウム・銅といったEV・半導体に不可欠な資源の争奪戦が続く中、これは単純な企業再編ではない。

複数の国有企業がバラバラに動いていた「弱点」を中国はどう直したか

これまでの中国の海外資源買収には、構造上の分散という問題があった。複数の国有企業が個別に交渉を進めるため、アフリカや中南米の鉱山国は複数の窓口を相手にできた。価格交渉でも足元を見られる場面があったらしい。

今回の一本化は、その弱点を明確に潰しにいく動きだ。一社が調整役を担うことで、買収案件の優先順位付けから入札価格の設定まで、意思決定の速度と対外的な交渉力が劇的に変わる可能性がある。

「中国は、海外の金属・鉱業取引を調整・統括する新たな国営投資会社を選定した」(Bloomberg、2026年6月3日)

資源国側から見ると、これは相手の重力が増したに等しい。コンゴ民主共和国のコバルト鉱山、チリの銅山、アルゼンチンのリチウム鉱床。それぞれの政府が今後向き合う交渉相手は、以前より一枚岩に近い中国になる。

米欧が「脱中国」を急ぐ横で、北京は真逆の手を打った

米国のインフレ削減法(IRA)や欧州の重要原材料法は、いずれも重要鉱物サプライチェーンの中国依存を減らすことを狙った政策だ。フレンドショアリングと呼ばれる同盟国間での調達網構築も進んでいる。

ところが北京が打ったのは、まったく逆方向の手だった。分散していた海外資源買収の指揮系統を集約し、支配網をむしろ強める方向に舵を切った格好だ。

海外資源買収の観点で言えば、中国はアフリカ大陸だけで数十の鉱山権益を保有しているとされる。この資産群をより効率的に管理・拡大する体制が整えば、西側が代替サプライチェーンを構築し終える前に、重要鉱物の調達先の選択肢を狭められるリスクがある。

日本にとっても対岸の火事ではない。電池材料や半導体製造に使うレアメタルの多くで、中国の精錬・加工シェアは依然として高水準にある。川上の鉱山買収が一本化されると、精錬段階での価格交渉力もセットで高まるという構図だ。

この先どうなる

注目すべきは、この国営企業が実際にどこまでの権限を持つかだ。「調整役」という位置付けのまま留まるのか、それとも実質的な意思決定権を持つ持株会社型に発展するのかで、影響の深度がまったく違ってくる。

米国は重要鉱物の輸入関税強化や同盟国との共同備蓄を検討しているが、買収競争のスピードで中国に遅れをとっているのが現状らしい。EUもクリティカルロー材料法の運用を始めたばかりで、代替調達先の開拓は緒に就いたばかりだ。

アフリカ・中南米の鉱山国が、一本化された中国の交渉力とどう向き合うか。その選択が重要鉱物サプライチェーンの地図を今後数年で書き換えていく可能性が高い。窓口が一つになったということは、そこを押さえれば全部動く、ということでもある。